フリーランスコンサルタントとして念願の独立…となると、まず取り組むべきは「案件の獲得」。独立前の取引先や知人からの紹介など、ある程度の「仕事確保のツテ」があったとしても、やはり新規取引先を開拓していかなければ事業継続は難しいものとなります。

とはいえ、特に独立したばかりの実績が少ないうちは「案件紹介サイトに登録はしたけれど、なかなか依頼が入らない」「条件が合いそうな企業にポートフォリオを送ったけれど、何の反応もない」など、思うような成果が得られずに落ち込んだ…なんて経験をしている人もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、案件紹介サイトや知人からの紹介に頼るだけでない“独自の営業活動”を展開し、新規案件を獲得した先輩コンサルタントの事例をいくつかご紹介。新たな案件を獲得したい、でもなかなか成果につながらないとお悩みなら、ぜひ参考にしてみてください。

「業務委託の募集が少ない…」と諦めていませんか?

たぶん、フリーランスコンサルタントとして活動しているほとんどの方が「業務委託」の案件のみに絞って新たな取引先や案件を探しているのではないでしょうか。

…というと、「フリーランスで活動したいのだから、業務委託の仕事を探すのは当然でしょ?」と思われるかもしれません。でも実は、それこそ新たな取引先・案件と出会うチャンスを大幅に狭めてしまっている大きな原因となっている恐れもあるのです。

新規案件確保のための活動をしたことのある方なら感じていらっしゃると思いますが、人事や経理、財務、法務などフリーランスコンサルタントがその専門性を活かし、活躍できるポジションの仕事を「業務委託」で募集している企業は非常に少ないのが現実です。

少ない案件に多くのフリーランスコンサルタントが殺到したとしたら…当然、企業としては「より高いスキルを有する人材に任せたい」と考えるもの。独立したばかりで経験・実績がまだ少ないという場合、なかなか案件が確保できずに苦労する可能性もあります。

では、なぜこんなに業務委託の募集は少ないのでしょうか。

その大きな理由のひとつは、これまで業務委託で仕事を任せた実績がない、もしくは少ないため、フリーランスに業務を任せることで、「自社にどんなメリットがあるのかわからない・イメージできない」から。やはり誰もが業務上の失敗やトラブルを避けたいと考えるのは当然の感情であり、新たに「実績がないこと」に踏み出すのは勇気がいるのです。

一方、求人サイトなどで正社員募集の記事を見ると、例えば人事なら「採用面接や人事企画」「労務の専門知識」「給与・手続き」など幅広い業務スキルを求めているケースは少なくありません。また経理や法務、財務など、それぞれの分野における専門資格を有していることを必須条件に挙げているものもあります。

しかし、こうした「高いスキルを持ち合わせた転職希望者」がその需要のすべてに応えられるかといえば、それも難しいのが現状です。また、引く手数多な“優秀な人材”は、当然、より労働条件の良い企業への転職を希望する傾向がありますので、大企業・上場企業に比べ、どうしても条件面が厳しい中小企業などは、思うような人材を確保できずに悩んでいる…なんてことも珍しくありません。

こうした「より高い専門性」「幅広い業務経験」を求めている正社員募集に対して、逆に業務委託での勤務契約を提案する――というのは、実は意外に成功者の多い案件獲得法のひとつ。

実際、正社員の応募記事に自分のこれまでの経歴やスキルとともに、フリーランスコンサルタントとしての契約を希望する旨を記載したうえで応募し、面接まで進んだというケースは少なくありません。そして面接の場で

・自分がコンサルタントとしてどのようなスキルを提供できるか

・正社員ではなく業務委託契約することでの企業側のメリット

・勤務日数、報酬などの見積もり

などをしっかりとプレゼンし、契約を勝ち取った先輩コンサルタントもいます。「正社員募集しかない…」と、そこで諦めてしまうのではなく、少しでも可能性を広げる行動に踏み出してみましょう。

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正社員募集に業務委託希望者が応募して「勝ち目」はあるの?

とはいえ「正社員募集」をしている企業は、やはり長く勤めてくれる正社員が欲しいのであって、業務委託希望者が応募しても門前払いされる、もしくは書類審査を通過するのは至難の業なのではないか…と考える人もいるかもしれません。結論からいえば、確かにそういう企業もあります。「自社の組織文化を理解し、長く働いてくれる人材を最優先に獲得したい」という想いが強い企業であれば、業務委託契約を希望したところで門前払いとなることもあるでしょう。

しかし今、多くの企業で終身雇用制度が崩壊し、「社員の半分以上が中途採用」という企業も珍しくありません。また能力が高く、会社が求める結果をしっかりと出してくれれば、雇用形態は気にしないという柔軟な採用方針を持つ企業も増えています。

特に会社創業から間もないベンチャー企業などは、「とにかく高いスキルを有する優秀な人材が欲しい」という気持ちが強い傾向がありますので、業務委託希望者でもスキル・経験さえ条件に合っていれば選考に勧める可能性は高いと思われます。

実際、正社員募集に応募し、業務委託契約を獲得した先輩フリーランスコンサルタントが、入社後「なぜ自分を採用したのか」を採用担当社に聞いたところ

・応募してきた正社員希望者の中に期待するスキルを持つ人材が少なかった

・(採用した)先輩フリーランスコンサルタントの実績、スキルが高く、非常に魅力を感じた

・能力を発揮してくれれば契約区分には正直あまりこだわっていなかった

・正社員募集にもかかわらず飛び込みで応募してきた行動力の高さに魅力を感じた

といったことを「採用の決め手」として挙げてきたといいます。

もちろん応募した企業の採用、人材教育などに対する考え方によって変わってくる部分ではありますが、中には正社員募集に業務委託で応募をしてきたこと自体を「行動力がある」「発想力がある」とプラスに評価してくれる可能性があることもわかります。こうした実例からも、必ずしも「正社員募集=正社員希望者の方が有利」というわけではないということがわかりますので、まずは一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。

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求人サイトだけでなく「企業ホームページ」のチェックを!

また、取引先を探す際に「求人サイトや人材紹介サイトばかりチェックしている」という場合もぜひ改めたいポイント。

ご存じの通り、求人サイトや人材紹介サイトに記事を掲載するためには、それなりに高額な掲載料がかかります。そのためどの企業も、「今すぐ人材を確保したい職種・ポジションのみ」に絞って掲載しているケースも少なくありません。つまり求人サイトや人材紹介サイトだけしかチェックしていないという場合、企業が募集している人材の「一部」の情報しかチェックしていないという可能性が高いのです。

では、こうした求人サイトに掲載しきれない人材募集の情報を、どこに記載しているのか。それは「自社のホームページ」になります。

もし、求人サイトや人材紹介サイトで気になる事業に取り組んでいて興味がある、でも自分が得意とするジャンル・ポジションでの募集ではない…といった企業があったら、ぜひ一度、その企業のホームページもチェックするようにしましょう。求人サイトには記載されていない職種でも、「良い人がいれば採用したい」といった「通年採用」や「オープンポジション」での採用を行っているケースは珍しくありません。そこで自分の希望する職種でも募集をしていれば、そのホームページからアプローチすればよいのです。

また、先述した「正社員募集しかない企業」への応募を検討する場合にも、必ず一度はホームページを確認するようにしたいもの。求人サイトでは正社員しか募集していなくても、ホームページ内では「外部スタッフも随時募集」「業務委託での勤務も要相談」などと記載されている、他の部署で業務委託の人材を募集しているというケースもあります。実際、筆者もこのパターン業務委託の案件に応募し、今もお取引を続けるクライアントを確保しています。

たとえ自分が希望する職種の募集でなくても、業務委託の募集記事を行っているということは、その企業として「業務委託を受け入れる体制が整っている・抵抗がない」ということ。正社員募集なのに業務委託で応募するのは…といった不安や迷いも軽減されるはずです。

派遣社員からスタートし、業務委託契約に進んだケースも!

また、意外な案件獲得方法として「派遣社員での勤務」を経て、業務委託契約へと切り替えるというパターンもあります。

実は、自社ホームページの開発や更新を任せられる人材、年次決算や税務申告まで対応できる経理経験者、社会保険加入手続きや労務、給与管理も任せられる人事スタッフ…など、高い経験・スキルを持つ人材を派遣社員として募集している企業は少なくありません。

本来であれば「正社員で補うべきでは?」と思うような重要なポジションを派遣社員で補おうとする理由としては

・優秀な人材が欲しいが、忙しくて面接や選考をする時間が捻出できない

・優秀な人材であれば、契約形態にはこだわらない…という柔軟な採用方針を持っている

・できる限りコストを抑えて優秀な人材を確保したい

といったものが考えられます。

高いスキルを持つ優秀な人材をできるだけ早く、コストを抑えて確保したい。自社の仕事を任せられるなら雇用形態にもこだわらない…という企業であれば、フリーランスコンサルタントが受け入れられ、活躍できる可能性は非常に大きいはずです。

実際、先輩コンサルタントの中には、派遣社員として契約期間満了まで勤務した後、業務委託社員契約を結んだという人もいます。実際、筆者にもこのパターンで業務委託契約を結び、長く取引を続けているクライアントがいます。派遣社員として勤務している期間に、自分のスキルや経験、仕事への姿勢なども実際に見てもらうことができるので、業務委託契約を結んだときにはすでに人間関係がしっかりと構築できていますし、業務を行う上でも非常にやり取りしやすく、メリットも大きいと感じています。

また、派遣社員の採用は、正社員を採用するよりも「人件費コストがかからない」と言われてはいますが、時給だけでなく派遣会社へのマージンや残業代金など、毎月、それなりの金額を支払うことになります。そうした負担を軽くしたいと考えている企業も少なくありませんので、適正な報酬価格での業務委託契約を提案することは、決して迷惑&面倒な申し出でもないはずです(あくまでも筆者個人の経験ですが、派遣社員時代の時給で換算し、やや上乗せした額で契約を提案しても、断られたことは一度もありません)。もちろん、企業と派遣会社との間にも取り決めや信頼関係がありますので、業務委託契約を無理強いすることはできませんが、案件獲得法のひとつとしてはアリかもしれません。

ただし、派遣社員として一度勤務すると決めたなら、契約満了まではしっかりと任務を全うするのは社会人として当然の務めです。雇用期間がまだかなり残っている状態で業務委託への契約変更をお願いするといった行為は避けるようにしましょう。

・・・いかがでしょうか。

正社員や派遣社員など、雇用形態が異なる募集案件を活用する方法は、「ここまで?」「許されるの?」と感じる人もいるかもしれません。しかし、自分に合った募集記事が掲載される・知人から紹介されるのをただ待っているだけで仕事が獲得できるほど、フリーランスの世界は甘くありません。

自分のスキル、経験を活かしてその会社にどんな恩恵をもたらすことができるのか、しっかりと頭の中で整理し、相手にその熱意を伝えることができれば、「募集とは違う応募が来た」という理由だけで非難されることはありません。もしそれをとがめてくるような企業に出会ったら…たとえ契約ができても、自分らしく能力を発揮できる場所ではなかったはずだと気持ちを切り替えましょう。

フリーランスとして生きていくためには、礼儀をわきまえたうえでの「大胆さ」「図々しさ」が必要なのです。

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