ビジネスや経営に関する高い知識を保有していることの証明となる国家資格、中小企業診断士。コンサルタントを志す方からも人気の資格ですが、中小企業診断士はコンサルタントへの転職に有利と言えるのでしょうか。
本記事では、中小企業診断士を取得することで得られるメリットや、転職に有利になるのか否かをプロのコンサルタントが考察します。資格取得やコンサルへの転職を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
中小企業診断士とは?
まずは中小企業診断士の概要について見ていきましょう。
ビジネス系の国家資格
中小企業診断士とは、主に中小企業のビジネスや経営に活かせる知識を保有していることを証明する国家資格です。中小企業支援法に基づけば「中小企業の経営診断の業務に従事する者」と定義され、中小企業庁から委託された中小企業診断協会が資格の認定を行います。
難関国家資格としてネームバリューがあり、ビジネスマンや一部の大学生がキャリアアップや就活に活かすために取得するケースが多いです。
また、一次試験と二次試験に分かれているのも特徴的。一次試験では筆記試験が課され、財務・会計や経済学・経済政策、経営法務、経営情報システムなど、全7科目からなる出題範囲が幅広く、いずれの範囲においても各分野の専門資格クラスの問題が出題されます。
二次試験は記述式のペーパーテストで、いくつか出題される企業の事例に対し、診断士として成功や失敗の要因を分析し、字数以内にまとめて記載しなければなりません。体系的に知識を身に付けていなければ回答するのは難しいでしょう。
中小企業診断士が難関と言われる所以はこの「範囲の広さ」と「求められる知識の深さ」にあります。
例えば財務・会計では日商簿記1級と同等のレベルで問題が出題されるため、全くの初学者が中小企業診断士を取得しようとする場合は各分野の知識をゼロから身に付けなければならないため、長い学習時間が必要です。
また、コンサル業界への転職に活かすために取得を志す方も多く、中小企業診断士を取得してコンサルタントへ転向することを検討している方にとっては「転職に活かせるのか」という点が注目されるポイントでしょう。
コンサルティングに活きる知識が得られる
一般的に中小企業診断士を取得してコンサルタントを目指す場合、経営コンサルタントや戦略コンサルタントを志すことになるでしょう。確かに中小企業診断士は幅広い知識が得られますが、その知識がそのままコンサルティングの実務に活かせるわけではありません。
経営コンサルタントとして直面する経営課題は多岐にわたり、企業によって大きく異なります。また、クライアントの業種や規模、コンサルティング内容に合わせて臨機応変に対応を変えなければならず、転職においてはどうしても資格よりも実務経験が重視されてしまうと言えるでしょう。
とはいえ、経営コンサルタントが備えておくべき知識のベースを身に付けているとは考えられるため、全く無駄であるとも言い切れないのが実情です。
中小企業の経営やビジネスに限った内容
経営コンサルタントが対応する経営上の課題は様々ですが、課題の内容は企業の規模によっても大きく異なります。特に、中小企業診断士が身に付けている知識は中小企業に限った内容なので、大企業の課題に対応できるかと言われると疑問が残ります。
こうした背景もあり、中小企業診断士のみでコンサルタントの実務をこなせるとは言い切れません。
中小企業診断士の難易度は?
難関の国家資格として有名な中小企業診断士ですが、実際に合格するのはどれくらいの難易度なのでしょうか。
中小企業診断協会が提供する「令和3年度の試験について」によれば、同年度の一次試験合格率は約36.4%、二次試験の合格率は約18.3%でした。どちらも通過しなければ資格は取得できないため、一次と二次の合格率を掛け合わせた数値が合格率となります。つまり約6.7%となり、一発合格はかなり狭き門であることが見て取れるでしょう。
中小企業診断士があればコンサルタントになれる?
難関資格の中小企業診断士。「これだけ難しい資格を取得したのだからコンサルタントになれるだろう」と思ってしまいそうですが、経営コンサルタントや戦略コンサルタントといった職業に転職することは可能なのでしょうか。
実務がこなせるレベルではないのが実情
実情として、コンサルタントの実務をこなす上で中小企業診断士の資格を保有しているだけでは不十分と言えます。コンサルタントに求められるスキルや資質は非常に多く、ビジネスに関する知識があるだけでは即戦力足りえないのです。
以下の記事ではより細かく経営コンサルタントの実務や求められるスキルについて解説しているので、気になる方はこちらも確認しておくことをお勧めします。
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転職には有利になるため取得するのは◎
経営コンサルタントの実務に活かせるとは言えませんが、転職に活かせる可能性はあると言えます。とはいえ、その場合も年齢と経験の有無によって異なるため注意しましょう。
これまでのキャリアで特定の業界に対する経験や知識があり、コンサルティングに近い働き方をしている方であれば、コンサルタントが未経験であってもファームに転職できる可能性はあります。
しかし、こうしたキャリアでコンサルタントに転職するには「ポテンシャル採用」で採用される必要があるでしょう。ポテンシャル採用であれば年齢制限はありますが、今後の可能性を加味した採用が期待できるので、未経験でもコンサルタントになれるかもしれません。
ポテンシャル採用の年齢制限を超えてしまうと「中途採用」の枠に分類されるため、則戦力での採用以外に道はなくなってしまいます。先述した通り、中小企業診断士ではコンサルタントの即戦力として認められないため、中小企業診断士を取得しただけで中途採用を通過するのは難しいです。
最終的は独立も視野に
一方で、中小企業診断士は、実務経験が伴うことが前提ですが独立しているコンサルタントも多数います。経営コンサルタントとして唯一の国家資格であり試験合格で箔を付けたうえで独立を目指すのも良いでしょう。
下記の記事では、中小企業診断士が独立する場合の流れや、独立に向けて必要な準備について解説しています。中小企業診断士の資格取得から独立までを考えている人は参考にしてください。
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コンサルタントへの転職で有利な資格はある?
中小企業診断士以外にもコンサルタントへの転職で有利になると言われている資格がいくつかあります。ここでは、これらの資格についてもコンサルタント目線で考察してみましょう。
MBA取得
経営大学院を卒業した証として授与されるMBAもコンサルタントへの転職で有利と言われます。実情としては中小企業診断士と同様のレベルとして見なされることがほとんどなため、診断士と同様に「ポテンシャル採用なら有利になる可能性がある」という位置づけでしょう。
公認会計士
会計のスペシャリストであり、中小企業診断士と同様に難関の国家資格として人気の公認会計士。公認会計士を取得した場合、財務コンサルタントとしてのキャリアを拓くことはできるでしょう。まずは会計士事務所に転職して実務経験を積み、財務コンサルタントとしてのルートを辿るのがおすすめです。
ジャンルが異なることもあり、公認会計士を保有している状態でいきなり経営コンサルタントになるのは難しいと言えます。
中小企業診断士でコンサル転職を果たそう
中小企業の経営診断を行えるスペシャリスト、中小企業診断士。難関の国家資格として人気の同資格ですが、経営コンサルタントへの転職が必ず叶うとは言い切れないのが実情です。
ポテンシャル採用の応募が可能な年齢の方は資格取得が有利にはたらく可能性もありますが、中途採用に応募しなければならない方は、資格ではなく実務経験を積んで将来的な即戦力としての転職を目指しましょう。
特定の業種に明るく、コンサルタントに近い働き方をしている方であれば即戦力としての採用が叶う可能性もあるため、年齢やキャリアを諦めずに応募してみることをおすすめします。