企業との取引で、最初から口約束で仕事を引き受ける事例は少ないです。しかし一旦契約書を結んだ後に、「○○もできますか?」と聞かれて引き受けてしまうことはあります。

本来違う業務ですから、新たに契約書を結び直す必要があります。しかしそこを省いてしまうことも多いです。また契約書を結ぶ前に見積もりだけ同意して、仕事をスタート。後で契約書を結ぼうとなった段階で話が変わっていることもあります。

また知人の紹介といった場合、契約書を作らないこともあります。個人相手だと、さらにトラブルになることが多いのです。そこでこの記事では、フリーランスが契約書を徹底させる理由だけでなく、お勧めの電子契約書ツールについても解説します。

口約束で依頼先と揉めることは意外と多い

企業相手の取引だと契約書を結ばないことはありません。しかし多いのは契約とは違った業務を依頼された場合です。契約書を結んだ段階では分からなかった業務をお願いされた時に、つい「いいですよ」と新たに契約書を結ばずに行ってしまうことがあるわけです。

私の知人のエンジニアはクライアントの要望を聞いて、最初、善意で追加の仕事をしていました。しかし本来の業務以外の作業が増えたことで、「これは業務外ですので、追加費用が必要です」と伝えたそうです。

ところが依頼したクライアントとしては、その作業も業務の範囲内で行ってくれていると思っていたようです。

このようにあいまいに作業を引き受けてしまい、後で作業量が増えて追加請求。その結果、依頼先と揉めることは、知人のエンジニアだけの話ではありません。本来であれば契約書の中で追加費用についても明記して、追加の作業を引き受けるべきです。

特に取引期間が長くなってくると、こうした口約束で仕事をしてしまい、トラブルの温床になることが増えます。またBtoC案件でもこうした事例は起こります。最近ではスモールビジネスや副業が流行っており、個人事業主やフリーランスを相手としたコンサル業務を受けることもあるでしょう。

しかし契約書をしっかり結んでいないために、請求が出来なかったという知人の話を聞いたことがあります。知人の紹介で知り合い、食事をしながら何となくビジネスの話になります。

その際に個人事業主やフリーランス向けコンサルの話をしたら、「それいいですね」となり、コンサル業務をスタートしたようです。しかし相手としてはコンサルではなく、ただの相談だと思っており、費用が掛かることにびっくりしたようです。

知人の場合、一回目の請求をした際に、相手から言われたとのこと。契約書は作っていません。料金については伝えましたが、それでOKしたわけではないという主張なのです。こうした事態は意外と起こるのです。

フリーランスが契約書を徹底すべき理由

マッチングサービスを使わずに直接契約を成功させるコツ(見出し下画像)

フリーランスが契約書を徹底すべき理由としては以下の2つがあります。

業務内容が明確になる

契約書をしっかり結ぶことで、業務内容をはっきりさせる効果があります。業務内容が明確になると、追加費用の必要な業務が何かをクライアントに示せるわけです。そのためやるべき業務内容は、明確にしておく必要があります。

事前に話していた業務内容が全て記載されているか、あいまいな表現がないかをしっかりと確認します。エンジニアであれば「ウェブ開発」とはせずに、「○○というwebサイトの○○の開発」など詳細に書きましょう。

報酬の未払い防止になる

契約書があることで報酬の未払いの防止になります。契約書には、支払いがいつになるのかの記載があるはずです。例えば毎月業務を行っているコンサルの場合、「月末締めの翌月払い」などの支払いに関する記載があります。

そうした記載があれば報酬が支払われなかった場合に、クライアントに問い合わせることも可能になるわけです。契約書が結ばれていない場合、いつ支払いがあるのか分かりません。

特にエンジニアで開発案件に携わる場合、納品後なのか、先払いなのか、分割なのかしっかりと契約書で取り決めておくべきです。さらに支払いの条件、追加作業が発生した場合は別途請求するなどの記載も必要でしょう。

見積もりを送ったとしても、いつ支払うべきなのかが無いと、いつまでも支払われないことは意外と多いです。例えば開発案件で依頼された作業は終了したため、エンジニアとしては納品したという認識なのに、追加作業を依頼されたため支払いがなされないというケースがあります。クライアントとしては追加作業が終わった時点で納品という認識なわけです。こういうケースもあるため、依頼された作業が終了した段階で支払い。追加作業は別途請求という形を示しておく必要があります。

また意図的に支払いを先延ばししているのではないかと疑われる事例もあります。こうした事態にならないためにも、契約書で報酬額だけでなく、支払い時期についてもしっかりと明記しておきましょう。

契約期間が明確になる

契約書を結ぶことで契約期間が明確になります。例えばコンサル業務の場合、何ヶ月間の業務なのか、契約書に記載する必要があります。また更新があるのかどうかも重要です。契約の内容によっては、自動で更新されると記載されているものもあります。

急に案件終了になってしまうと、次の案件を探すまで時間が必要なため、困ることも多いです。契約期間が明記されていれば、次の案件を探す動きもできます。契約期間が書かれていない場合は、確認するようにしましょう。

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フリーランスでも使える電子契約書ツール5選

フリーランスでも使える電子契約書ツールは様々リリースされています。その中でも特に使いやすいツールを5つ紹介します。

送信手数料が掛からない!freeeサイン

freeeサインはfreeeサイン株式会社が開発した電子契約書ツールです。freeeサインのメリットとしては送信手数料が掛からないことです。一般的に電子契約書ツールは送信手数料が発生しますが、freeeサインであれば月額手数料以外かかりません。

月間契約書送信数1通までであれば無料で利用できますし、それ以上利用したい場合でもユーザーが1人であれば月額5,478円(年払い・税込)で利用できます。そのためまずは無料で利用して、送信数が増えるようであればプランを変更するのが良いでしょう。またfreeeサインはテンプレート機能が充実しています。テンプレートにこだわりがある人にはお勧めです。

一方、デメリットとしてはアカウント数を増やすと、月額料金が大幅にアップしてしまうことです。ただフリーランスとして利用している場合は、基本的に1人で使っているため、デメリットを感じるまでにはならないでしょう。

freeeサインのプラン

・無料プラン 
送信単価 無料
アカウント数 1
送信数 1通/月

・Lightプラン
料金 年払い 月額5,478円(税込)
送信単価 無料
アカウント数 1
送信数 50通/月

・Light Plusプラン
料金 年払い月額2万1780円(税込)
送信単価 無料
アカウント数 6
送信数 無制限

・Pro/Pro Plusプラン
料金 年払い月額5万5000円(税込)〜
送信単価 無料
アカウント数 要相談
送信数 無制限

殆どの機能が無料で利用できる!みんなの電子署名

みんなの電子署名は株式会社ベクターが運営するサービスです。みんなの電子署名のメリットは無料で無制限に利用できるというところ。しかも送信料も無料です。取引先がみんなの電子署名を導入していなくても利用できるのもメリットになります。

ではどのような場合に料金が発生するかというと、署名済みの文書を1年間サーバーへ保管する場合です。保管する際の料金は50文書で月額550円(税込)で、文書が増えるほど料金は増えていきます。これがデメリットになりますが、保管料が掛かっても安いと言えます。

みんなの電子署名のプラン

料金 無料
送信単価 無料
アカウント数 無制限
送信数 無制限

手書き署名にも対応!SignTime

SignTimeはサインタイム株式会社が提供する電子契約書ツールです。SignTimeのメリットは月額979円(年払い・税込)で月10通まで無料で送信できるところ。また締結書類の保管や管理も可能です。さらに手書きでの署名にも対応しており、紙と同じようなサインにも対応しています。

一方デメリットとしては、知名度が低いという点です。2020年9月に会社が設立され、2021年3月22日にSignTimeがリリースされており、実績面で不安が残ります。ただ導入企業が増えていますので、今後の様子を見ながら導入を検討しましょう。

SignTimeのプラン

エントリー
料金 年払い月額979円(税込)
送信単価 月10通まで無料
アカウント数 3名まで
送信数 10件/月

※30日間の無料トライアル

ビジネス
料金 年払い月額8,668円(税込)
送信単価 月50通まで無料
アカウント数 無制限
送信数 50件/月

プロ
料金 月額3万2780円(税込)
送信単価 要問合せ
アカウント数 無制限
送信数 要問合せ

メール認証で簡単署名!電子印鑑 GMOサイン

GMOサインはGMOグローバルサイン・ホールディングスが運営している電子契約サービスです。GMOサインのメリットは2つの電子署名に対応しているところです。

そのためクライアントがGMOサインを導入しており、契約書をしっかりと結びたいと考えている場合はお勧めです。

メール認証での電子署名(立会人型)が可能となっており、非常に便利です。送信先も簡単に認証できるため、相手側に負担にならないというメリットがあります。

一方でデメリットとしては送信コストと月額利用料がやや高めのところです。特に送信コストは立会人型で1件110円(税込)、当事者型で1件330円(税込)かかります。また月額利用料も9680円(税込)かかります。お試しフリープランもあるので、まずはこちらで試してみるのが良いでしょう。

GMOサインのプラン

お試しフリープラン
料金 無料
送信単価 無料
アカウント数 1
送信数 5件/月

契約印&実印プラン
料金 月額9,680円(税込)
送信単価 契約印タイプ(立会人型)110円 / 件 実印タイプ(当事者型)330円 / 件
アカウント数 無制限
送信数 無制限

弁護士が提供するクラウドサイン

クラウドサインは弁護士ドットコムが提供する電子契約書ツールです。クラウドサインのメリットは日本の弁護士が日本の法制度に合わせて作っているため、法的効力について安心感が持てる点です。

一方、クラウドサインのデメリットとしては料金が高いところ。Lightプランでも月額1万1000円(税込)、送信手数料も220円(税込)かかります。契約数が多くなる場合は、送信手数料がかなり増えてしまうでしょう。

クラウドサインのプラン

Free Plan
料金 無料
送信単価 無料
アカウント数 1名
送信数 5件/月

Lightプラン
料金 1万1000円(税込)
送信単価 220円税込
アカウント数 無制限
送信数 無制限

Corporateプラン
料金 3万800円(税込)
送信単価 220円税込
アカウント数 無制限
送信数 無制限

※システム連携が可能

Enterpriseプラン
料金 要問合せ
送信単価 要問合せ
アカウント数 無制限
送信数 無制限

※複数部署で管理可能

電子契約書を嫌がるクライアントもいるので注意!

電子契約書は証拠として採用された判例が少ないため、嫌がるクライントもいます。その場合、自分は電子ファイルで保管し、クライアントには紙で保管してもらうようにしましょう。

また電子契約書は、導入が大変だからと嫌がられる可能性もあります。そうしたクライアントに対しては、メール認証で署名できる立会人型なら簡単にサインできることを説明して、電子契約書での契約について理解してもらいましょう。

どうしても紙でのサインにこだわる場合は、クライアントに従う方が良いです。ただここ最近の契約は、私自身もほとんど電子契約書で済ましています。そのため電子契約書が断られるというのはかなり少ないでしょう。

契約書の徹底は自分を守ることにつながる

契約書を作成して契約することで、フリーランス自身を守ることにも繋がります。電子契約書は簡単に作成できます。また利用料も安いものを選択すれば、ランニングコストも安く済むのです。

ここで紹介した電子契約書ツールから自分にあったツールを選んで、導入を検討してみましょう。まずは無料プランやお試しプランで利用することをお勧めします。

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