「扶養内で働く」という働き方は、アルバイトやパートの人に限った話ではなく、フリーランスであっても可能です。

扶養に入れば、節税になったり社会保険が優遇されたりとメリットがある一方、誤った認識をしていると働き損になってしまうこともあります。本人だけではく、扶養者の所得や世帯全体の所得にも影響があるので、正しい理解が必要です。

本記事では、フリーランスが知っておきたい3つの扶養についてまとめました。確定申告の注意点や扶養内で働くメリット・デメリットについても解説しますので、フリーランスとして扶養内で働こうと思っている人は、ぜひ参考にしてください。

フリーランスは3つの扶養について理解しよう

「扶養」とは、配偶者や子ども、両親などの親族への経済的な援助を意味する言葉です。

家族のためにお金を稼いでいる人(扶養者)が、配偶者や子どもなどの収入がない、または収入が少ない家族を「扶養に入れる」、妻が夫の「扶養内で働く」といった言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。

しかし扶養といっても、内容や適用条件が異なる扶養があります。これらは混同されがちですので、しっかり理解しておくことが大切です。

まずは下記の3つの扶養について確認していきましょう。

税制上の扶養

税制上の扶養とは、扶養者(納税者)の所得から一定金額が控除される制度のこと。扶養されている人(被扶養者)の年間合計所得金額が48万円以下の場合に、適用されます。

被扶養者が配偶者の場合は「配偶者控除」または「配偶者特別控除」、子どもや親、親族の場合は「扶養控除」の対象となります。

配偶者控除は、夫婦のどちらかが納税者で、もう一方が扶養の適用条件を満たしている場合に、一定金額が控除され、納める所得税と住民税の額が少なくなります。

配偶者控除の要件は下記のとおりです。(2023年3月 現在)

・民法の規定上の夫婦であること(内縁関係は該当しない)
・生計を同一にしている
・配偶者の年間合計所得が48万円以下
・青色申告の事業専従者の場合、その年に一度も給与の支払いを受けていない
・白色申告の事業専従者でないこと

ここで気を付けなければならないのは、条件が「収入」なのか「所得」なのかということ。この2つは同じような意味で混同して使われることもありますが、内容が異なります。そのため扶養の条件を確認する際には、どちらの金額のことを言っているのか注意する必要があります。

国税庁は下記のように説明しています。

「収入」と「所得」という言葉は同じ意味のように使われることがありますが、税法上、収入から必要経費を差し引いたもの、つまり「もうけ」のことを「所得」と呼んでいます。

(国税庁 タックスアンサー №2011 課税される所得と非課税所得より引用)

「収入」とは、例えば商品を売って得た代金など事業で得たお金(売上)のことを言います。売上を得るためには、材料費や人件費、光熱費などいろいろな経費をかけて商品を作り販売します。そのため、売上の中には、純粋な利益と経費が含まれていることになります。

所得はざっくり言えば売上から経費を差し引いたもので、年間所得とは収入(売上)から材料費や光熱費などの経費と、基礎控除や青色特別控除など控除される額をすべて差し引いたものとなります。

住民税や所得税などは、所得金額によって納税額が決まります。そのため扶養控除対象の配偶者(妻)がいる場合は、夫の所得税と住民税の支払金額が少なくなります。

お給料が48万円以下でないと扶養に入れないのかと思われるかもしれませんが、そうではありません。パートやアルバイトの場合は、経費を引くことができない代わりに、基礎控除55万円を収入から引いた額が所得となります。

仮に給与収入が103万円だった場合、基礎控除の55万円を引くと48万円です。そのため所得金額は48万円以下ということになり配偶者控除の適用対象となるのです。

よく言われる「103万円の壁」とは、この税制上の扶養の条件のことを意味しています。

フリーランスの場合はこの例とは異なり、収入(売上)から経費と控除額を引いた金額が所得となるので、人によって税制上の扶養が適用される収入金額は異なります。

例えば、収入が160万円、経費が50万円、控除金額は青色申告特別控除の65万円が適用されている場合、

160万円―50万円―65万円=45万円

となり、所得金額としては48万円以下となるため、収入が103万円を超えていても扶養の対象となります。

逆に、売上が100万円だったとしても、経費が少なかったり、控除金額が10万円の白色申告であったりする場合は、所得金額が48万円を超える場合もあるのです。

扶養内で働ける金額を考えるときは、「収入」なのか「所得」なのかを確認し間違えないように注意しましょう。

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社会保険上の扶養

社会保険上の扶養とは扶養者の加入している社会保険(健康保険、介護保険、厚生年金)に一緒に加入し保険料を負担してもらうこと(被扶養者になる)です。

配偶者の社会保険上の扶養になると、健康保険料や年金を自分で支払う必要がなくなるため、手元にお金が残ることがメリットと言えます。

社会保険上の扶養になるには、以下のような、いくつかの条件があります。

・3親等以内の親族であること(配偶者、実子、孫、兄弟、実両親など。内縁関係でもOK)
・義父母、内縁関係の両親や連れ後などは、同居している場合のみ可
・75歳未満(75歳以上は後期高齢者医療保険という別の制度に加入するため)
・1年間の年間収入見込みが130万円未満

年収130万円未満が基準となっているため、「130万円の壁」と言われています。

ただし、加入している保険の種類によって条件が異なる点に注意が必要です。特に、収入の金額については年収だけではく月収も条件となっているところがあるので、現在加入している保険がどのような条件なのか、一度確認しておきましょう。

社会保険の扶養から外れると、健康保険料や年金を自分で支払う必要があり、手元に残るお金が少なくなります。

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家族手当上の扶養

配偶者が会社の従業員である場合、会社から家族手当が支給されることがあります。家族手当は扶養手当と呼ばれることもあり、福利厚生の1つです。

家族手当の支給条件や金額は、法律による定めがなく会社によって異なります。そのため、配偶者の収入が増えたり別居することになったりした場合に、支給がストップする可能性もあります。

仮に月10,000円ほど支給されていたとすれば年間12万円になり、大きな額だと言えるでしょう。家族手当の扶養から外れると支給されなくなるので、支給されている場合は条件を会社に確認しておきましょう。

フリーランスは扶養内でも確定申告は原則必要!

フリーランスとしての収入が扶養内であっても、確定申告が不要なわけではありません。フリーランスとして事業所得があり、他に給与所得がないのであれば、原則確定申告の対象です。

確定申告をすると所得税が算出され、来年度の住民税などの金額が決まります。例外もありますが、確定申告の対象であるにもかかわらず申告しなかった場合は、罰則の対象となります。

確定申告をしたからといって、扶養から外れるということはありません。

確定申告には、白色申告と青色申告があり、それぞれ税制上のメリットや必要書類、控除額も異なります。詳しく確認していきましょう。

白色申告する場合

白色申告は、申告に必要な帳簿の作成が青色申告に比べて簡単ですが、税制上のメリットがありません。簡易簿記とよばれる簡単なお小遣い帳のようなものだけで申告できるので会計の知識がない人でも簡単に作成できます。

控除額は、すべての納税者が受けられる基礎控除の48万円です(所得2,400万円以下の場合)。

青色申告する場合

青色申告をするには、開業届と青色申告承認申請書をあらかじめ税務署に提出し、承認を得ておく必要があります。

複式簿記とよばれる複雑な帳簿を作成する必要があるため、会計知識がない人には難しく感じることがあるかもしれません。ですが、控除額が大きいことや、経理上の特典があるなど、税制上のメリットはたくさんありますので、フリーランスで確定申告をする場合は、青色申告がおすすめです。

基礎控除の48万円に加え、e-Taxによる申告または電子帳簿保存の場合は青色申告特別控除としてさらに65万円を収入から控除することができます。

フリーランスが扶養内で働くメリット・デメリット

フリーランスが扶養内で働くメリットとデメリットについて解説します。

フリーランスが扶養内で働くメリット

フリーランスが扶養内で働くメリットは、世帯として節税できること、社会保険料が安くなることでしょう。

ここまで述べてきたように、扶養には3つの異なる内容があります。

税制上の扶養内で働くことになれば、本人の収入はセーブする必要がありますが、配偶者が納める所得税額は軽減されます。

そのため、少しでも収入が103万円を超えてしまうことで扶養から外れ、配偶者の納税額が増えてしまうケースよりも、結果的に世帯年収が増えることもあるのです。

社会保険料は、会社に属している場合は厚生年金や健康保険は本人と会社が折半して納めます。そのため、同じ収入金額であっても、すべてを自分で支払う必要のある国民健康保険や国民年金よりも保険料が抑えられるメリットがあります。

さらに、配偶者の社会保険の扶養に入っていれば、社会保険料は自分の収入から別に出す必要がなく、結果的に手元に残るお金が増えます。

また、フリーランスは、自分で自由に働き方を決めることができます。逆に言えば24時間仕事をしていても誰にも文句は言われないのです。そのため、ハードワーカーになってしまいそうな人は、扶養内で働くという一定の制限がある中で仕事をセーブすることになり、ライフワークバランスを崩さずに働くことができる、ともいえます。

働き方によっては世帯収入を増やすことができるので、フリーランスが扶養内で働くメリットは十分にあると言えます。

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フリーランスが扶養内で働くデメリット

扶養内で働くということは、一定の収入内に抑える働き方をしなくてはいけないということです。

そのため、せっかくフリーランスになったのだからと「年収1000万円を目指す!」、「高額案件にチャレンジする!」といった目標を諦めなくてはいけないかもしれません。

制約がある中での仕事は思った以上にストレスがたまります。もっと仕事をしたいと思っても、扶養から外れてしまうからとチャンスを逃してしまうこともあるでしょう。

たくさん仕事がしたい、思い切ってチャレンジしたいという目標がある人には、フリーランスとして扶養内で働くことは、デメリットが大きいかもしれません。

どちらも一長一短で、絶対良いというものはありません。

フリーランスとして独立する際にも、働き方を自分で決めた経験をしたはずです。メリットとデメリットが自分にとってどちらが大きいか、優先したいことは何かをよく考えてみましょう。

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フリーランスが扶養内で働くときの注意点

ここまで述べてきたように扶養には3種類あり、それぞれ内容や適用ルールが異なります。

扶養内で働いていた人が扶養を外れたときに、一番手元に残るお金に影響があるのは、社会保険上の扶養です。

社会保険の扶養から外れた場合は、自分で国民健康保険や国民年金に加入する必要があるからです。具体的には、以下の金額を自己負担する必要があります。

・国民年金保険料:約19.9万円(1年間)

・国民健康保険は、約2~3万円(1年間)※所得32万円と仮定した場合。ただし所得金額や自治体によっても金額は異なるため、詳しくはお住まいの自治体へ

年間22万円ほどを負担しなくてはいけなくなります。

配偶者の社会保険の扶養に入る条件が年収130万円未満だった場合、年収が131万円と1万円増えただけで、社会保険料を22万円も負担しなければならないということになります。

社会保険の扶養に入る条件は様々ですが、一般的に130万円~160万円が、年収と扶養上限の差額よりも社会保険料を多く負担しなくてはいけないため、働き損になるといわれるゾーンです。

160万円以上の収入が見込めるのであれば、思い切って扶養から外れるのも良いかもしれません。

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フリーランスが扶養内で働くには「130万円の壁」を意識しよう!

フリーランスが知っておきたい扶養の条件について解説しました。扶養にも3つの種類があり、それぞれの適用条件や内容が異なります。適用条件を確認するときには、書かれている金額が収入なのか所得なのかも意識してみてみましょう。

扶養内で働くことにはメリットもありますがデメリットもあります。また手取りが大きく減ったり、世帯年収に影響があったりする場合もあるので、働き損にならないように注意したいものです。

扶養内の働き方を希望するのであれば、まずは「130万円の壁」を意識してみましょう。

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