シンクタンクは、日本だけでなく世界的に見ても需要が高いです。しかし、日本のシンクタンクはアメリカの10分の1未満であり「シンクタンク小国」と呼ばれています。
シンクタンク小国と呼ばれているものの、日本のシンクタンクは国内の企業や政府、官公庁の事業拡大において非常に重要な役割を担っており、大きな期待を背負っているのも事実。シンクタンクコンサルに興味がある人は、本記事を通して仕事内容や必要な能力を理解しておきましょう。
シンクタンクの仕事内容だけでなく「シンクタンクコンサルになるにはどうすれば良いのか」も併せて解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
シンクタンクコンサルとは?
シンクタンクコンサルとは、政府や地方自治体などからの依頼に伴う調査・分析を行い、アドバイスを行う仕事です。
例えば自治体は地方のインフラ整備や設備投資を行う際に、投資にかかる費用や費用対効果を調査します。こうした場合に依頼を受けるのがシンクタンクコンサルで、必要な情報を収集し、集めた情報を元に適切なアドバイスを行うのです。
シンクタンクコンサルは、官公庁や大企業が意思決定をする際の情報収集に重要な存在。規模の大きな事業に関わりたい人におすすめの仕事と言えるでしょう。
シンクタンクとコンサルティングファームの違い
シンクタンクとコンサルティングファームを同じものとして考えている人もいます。しかし、シンクタンクとコンサルティングファームは、下記の3点において大きな違いがあります。
- 商材
- ビジネスモデル
- クライアント
シンクタンクコンサルが生まれた目的は、リサーチ力を通じて、経営の安定性を求めるためです。そのため、最初から営利目的で活動しているコンサルティングファームとは、特徴が異なります。
商材
一般的なコンサルティングファームの商材は「人」です。企業に対して、コンサルタントを派遣することで報酬を得るため、コンサルティングファームの売り上げは「人数×期間」で決まります。
ただ、シンクタンクの商材は人ではありません。「情報」がシンクタンクの商材です。シンクタンクは、官公庁が重要な意思決定をする際に、リサーチや分析を行い、分析結果を官公庁に提出することで報酬を得ています。
以上の違いから、シンクタンクとコンサルティングファームは「商材」が異なると言えるでしょう。
ビジネスモデル
シンクタンクとコンサルティングファームは、ビジネスモデルに違いがあります。コンサルティングファームは、クライアントにコンサルタントを派遣し、対価として報酬を受け取るのが一般的です。
コンサルティングファームは、人を商材としてビジネスを行います。このようなビジネスモデルから、人月商売と言えるでしょう。
シンクタンクコンサルのビジネスモデルは、受注した案件に対するレポートを提出し、報酬を受け取るというもの。つまりビジネスのカギを握るのは情報収集能力や分析力と言えます。
このような違いもあり、コンサルティングファームとシンクタンクはビジネスモデルや提供するサービスの核が大きく異なると考えられるでしょう。
クライアント
コンサルティングファームの主なクライアントは、民間企業です。民間企業が抱える経営課題やIT課題などに対して、適切なコンサルタントを派遣します。コンサルティングファームが組織全体で民間企業の改善に取り組むことは少なく、基本的には1~5人程度の小規模なチームで調査や分析、提案を進めるのです。
一方のシンクタンクですが、民間企業がクライアントになることは少ないと言えます。主なクライアントは官公庁で、案件を受注したら研究機関として調査を進め、経営や意思決定に活きるデータを抽出・提案します。
このように、メインとなるクライアントが民間企業か官公庁か、という点においても違いがあるので注意しましょう。
シンクタンクの仕事内容と種類
シンクタンクの母体となる組織は、大きく2つに大別できます。母体の組織が異なると、主な役割や仕事内容も異なるため、あらかじめ理解しておくとよいでしょう。シンクタンクの母体組織は、下記の2種類です。
- 政府系シンクタンク
- 民間系シンクタンク
それぞれの特徴を見ていきます。
政府系シンクタンク
政府系シンクタンクは母体が企業ではなく、政府や各省庁、日銀といった行政機関に分類されるものを指し、一般的にシンクタンクと呼称されるものの多くは政府系シンクタンクに分類されます。
政府系シンクタンクの代表的な組織は、下記の通りです。
- 内閣府:経済社会総合研究所内閣府
- 経済産業省:経済産業研究所
- 外務省:日本国際問題研究所
- 日本銀行:日本銀行金融研究所
政府直轄の組織で、もちろん営利目的ではありません。非営利団体として業務を進めるため、後述する民間系シンクタンクとは働き方や目的が異なる点に注意しましょう。
民間系シンクタンク
民間系シンクタンクは、大企業が母体となっている営利目的の研究機関です。基本的に官公庁とは取引をせず、民間企業に対して情報収集やデータの提供を行います。場合によっては官公庁の案件をこなすこともありますが、基本的には企業へのコンサルティングサービスがメイン業務となるでしょう。
民間系シンクタンクの代表的な企業は、下記の通りです。
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティング
- みずほ総合研究所
- 野村総合研究所
- 損保ジャパン総合研究所
基本的な仕事内容は、政府系シンクタンクと変わりません。しかし、民間系シンクタンクは「シンクタンク業務ができるコンサルティングファーム」と言えます。
コンサルティングファームよりもリサーチ力に優れており、データに基づいたコンサルティングサービスを欲している企業に重宝されるのが特徴です。
シンクタンクコンサルに必要なスキル
シンクタンクコンサルとして活躍するためには、専門的な知識だけがあれば良いというわけではありません。シンクタンクコンサルに必要なスキルは、下記の3つです。
- コミュニケーション能力
- リサーチ力
- 分析力
上記は、コンサルタント全てに必要なスキルと言えます。シンクタンクの仕事にも必要不可欠であり、上記のスキルがあると活躍しやすくなります。
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コミュニケーション能力
コミュニケーション能力は、コンサルタント全員に必要です。そして、シンクタンクコンサルでは、クライアントが抱える悩みに関する正しい情報をリサーチしなければいけません。
コミュニケーション能力があれば、クライアントの悩みを正しく引き出せます。本当の悩みを引き出すには、クライアント先との信頼関係が重要です。
また、シンクタンクコンサルが、単独でプロジェクトに関わることはほとんどありません。常に、複数の人間と関わる必要があるため、コミュニケーション能力は必須と言えるでしょう。
リサーチ力
シンクタンクコンサルの仕事は情報収集やデータの分析がメイン。リサーチ力がなければ、正しいデータの分析もできず、効果的な提案もできません。
正しいデータを集め、扱えられれば、シンクタンクコンサルとして活躍しやすくなります。物事を「因果関係も含めて深く知りたい」という好奇心旺盛な人に向いていると言えるでしょう。
また、近年注目を集めている「ビッグデータ」や「データアナリティクス」といった領域も踏まえ、膨大なデータの中からクライアントの意思決定に活きる情報を抽出・分析できなければなりません。リサーチ力を身に付けるには、必要な情報を見極めたり、分析の手法を知ったりすることが大切です。
分析力
リサーチした情報は、正しく分析できなければ意味がありません。なぜなら、情報を集めるだけでは「使えるデータ」にはならないためです。正しく分析することで、初めて解決策が見つかるでしょう。
案件の規模が大きくなればなるほど、情報の取捨選択が重要になります。意思決定と関連した情報は何なのかを考えられれば、分析もしやすくなるでしょう。
以上のことから、シンクタンクコンサルには分析力も必要です。物事を追求できることだけでなく「情報やデータの中から原因を探ること」が好きな人にも向いています。
シンクタンクコンサルになるにはどうすれば良い?
シンクタンクコンサルになるためには、応募先のシンクタンクの選考を受けて合格しなければいけません。シンクタンクコンサルの採用試験は、下記の流れで行われることが一般的です。
- 書類選考
- 筆記試験
- 面接
コンサルタントとしての試験に合格した経験があっても、必ず合格できるわけではありません。選考では、経験だけでなく「シンクタンクコンサルとして活躍できるかどうか?」が判断されます。
選考プロセスの中で、意識すべきポイントを理解し、選考の合格率を高めましょう。
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1.書類選考
書類選考では、履歴書や職務経歴書による選考が行われ、条件に合っているかどうかを判断されます。履歴書に記載する強みや自己PRは、業務で求められるスキルと関連した内容にしましょう。
シンクタンクコンサルに関係のない強みや自己PRをアピールしても、採用担当者の印象には残りづらいです。本記事で紹介したシンクタンクコンサルの業務内容も踏まえ、実務に活きる経験や職歴、自身の特性などを盛り込んで書類を作れれば書類選考を突破できる可能性が高まります。
2.筆記試験
筆記試験の内容は、一律で決まっているわけではありませんが、シンクタンクコンサルの筆記試験では「論理的思考力」試されることが多いです。
論理的思考力とは、論点を整理して考えられる力のことです。論理的思考力があれば、複雑な事柄を前にしても、裏側にある法則や因果関係を見出して推論を立てられます。つまり、未知の出来事や難解な事象に対して、理解や解決ができるようになります。
コンサルタントに求められる論理的思考力は、関連書籍を読んだり、実際の思考法やフレームワークを身に付けたりすれば体得できるでしょう。ただし、一朝一夕で身に付く能力ではないため、普段から意識を向けておくことが大切です。
3.面接
書類選考と筆記試験を突破したら、面接へと進みます。従来の面接では、一般的な志望動機や経験の有無が質問されてきましたが、近年ではケースインタビューを実施するシンクタンクが多いです。
実際の課題に対してアドリブで解決策を導き出す必要があるため、事前の面接対策が非常に重要となります。ここで活きてくるのが先述した論理的思考力です。粗削りであっても構わないので、論理的に道筋の通った説明ができるよう、フレームワークを頭に入れておくとよいでしょう。
選考の内容はシンクタンクによって異なるため、応募前に過去の傾向を調べておくことも忘れずに。質問の意図を理解すれば、面接官が何を求めているのかを判断できます。
専門知識を身に付けられる「シンクタンクコンサル」
シンクタンクコンサルは、民間企業だけでなく官公庁とも取引できる仕事です。地方や国の仕事に関わることもあり、やりがいを感じやすいと言えるでしょう。
さらに、シンクタンクコンサルなら専門知識を身に付けることもできます。特定の分野に特化したシンクタンクなら、専門的な情報に触れるなかで、業界への理解や今後の動向を予測する視点を獲得できるでしょう。
シンクタンクコンサルは、ビジネスマンとしてキャリアアップしたい人や、将来的に成長したいという人にもおすすめの職業です。ぜひ本記事を参考にしつつ、シンクタンクコンサルとして活躍する未来を描いてみましょう。