フリーランスになると、経費にするため領収書を取っておけという話を、よく聞くのではないでしょうか。また、クライアントから領収書の発行を頼まれることもあるでしょう。
今回はフリーランスが領収書を必要とする理由を踏まえた上で、もらうとき・発行するときのポイントを解説します。領収書を正しく管理するため、フリーランスの方は確認しておきましょう。
フリーランスに領収書が必要な理由
フリーランスは確定申告のために領収書が必要と言われていますが、二重請求・二重払いを防ぐためにも領収書は必要な存在です。
確定申告時に経費の根拠として必要
フリーランスは1年間の売上から経費を差し引いた金額を事業所得とし、確定申告によって納税します。そのため、経費として支払った金額の根拠となる書類として、領収書が必要です。
もしも、根拠となるものが存在しないにもかかわらず経費計上していると、税務調査に入られた際、指摘されます。
税務をきちんと行なうために、領収書はきちんと保管しておきましょう。
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二重請求・二重払いを防ぐために必要
領収書はこちらが受け取るだけでなく、報酬を支払ってくれたクライアントに対して発行することもあります。
書類を作成する手間を感じるかもしれませんが、金額を受け取ったことを確認し、相手が支払ってくれた根拠となるため、二重請求・二重払いを防ぐ意味でも領収書は重要です。
フリーランスが領収書をもらうときのポイント
領収書は正しく経費計上するために、必要なものです。領収書をもらうときは、ポイントを押さえ、正しく保管・管理しましょう。
領収書の各項目は漏れなく記入してもらう
領収書の日付や宛名に書き漏れがあったり、金額の書き方を誤っていたりすると、正しい領収書として認められない恐れがあります。領収書を受け取る際は、各項目が正確に記入されているか確認し、誤りがあるならその場で訂正を求めましょう。
領収書がもらえないときは出金伝票を使う
経費となる支出であっても、自動販売機で購入した飲食物やバス車内で支払った運賃などは領収書が発行されません。仕事上で付き合いのある相手へのお見舞い金や香典、お祝い金なども経費にできますが、こちらも領収書の発行を依頼できないものです。
そのような場合は、出金伝票を使って支払った日付や金額を記録し、領収書の代わりとして使用できます。出金伝票は市販のものに手書きしても、自分で専用の書式を自作しても構いません。
なお、慶弔関係の出費である場合、出金伝票の記入と合わせて招待状や案内状なども残しておくと、後で確認しやすくなります。
また、少額の支出であれば、支払時のレシートも領収書の代わりに使えます。
出金伝票の書き方
出金伝票には、次の項目を記入します。
- 日付(実際に支払った日)
- 支払先名(支払った個人やお店の名前など)
- 勘定項目(帳簿付けする際の勘定項目)
- 支払内容(何のための支払いだったか)
- 金額(実際に支払った税込金額)
時間が経過すると、いつ・どこで・いくら支払ったのか忘れてしまう恐れがあります。出金伝票が必要なときは後回しにせず、すぐに書くようにしましょう。
領収書をなくした・もらい忘れた場合
領収書は二重請求・二重払いを防ぐため、原則として再発行してもらえません。もしも紛失した場合は、レシートか出金伝票で代用となります。
支払いにクレジットカードを使っている場合は、利用明細が領収書の代わりになるため、領収書がなくても問題ありません。
領収書をもらい忘れた場合、お店にお願いして後から発行してもらえるかもしれませんが、断られるケースもあるでしょう。また、出張など、遠方で支払った際の領収書は取り寄せが難しくなります。このような時も出金伝票で代用するしかありません。
しかし、領収書の紛失・もらい忘れによる出金伝票での処理を多様していると、税務調査時の印象は良くありません。「紛失しても、もらい忘れても、出金伝票があれば大丈夫」とは思わず、必要な領収書はしっかり受け取って保管しましょう。
受け取った領収書の保管方法
領収書は保管期間が定められており、青色申告の場合7年間、白色申告の場合5年間保管する必要があります。
領収書を保管する際は、事業年度ごとに分け、必要なときに参照しやすいよう整理しておきましょう。
簡単なのは、日付順に並べて封筒にしまう方法ですが、量が多いと後で確認する時に手間取ります。保管する領収書の量にも寄りますが、取引先や勘定項目別、月別に分けたり、専用のファイルを作って整理したりすると確認しやすくなります。
電子帳簿保存法によりデジタル保管も可能に
電子帳簿保存法により、確定申告に必要な各種書類の電子保存が認められるようになりました。データの保存方法などに要件がありますが、デジタル保管にすると紙の領収書はスキャンして保存でき、原本は不要になります。
保存方法の要件については、国税庁のホームページを確認するとよいでしょう。
デジタル保管の場合、保管場所をクラウド上にすると、万が一自宅PCにトラブルが発生してもデータ喪失を防げるのでおすすめです。
参考:電子帳簿保存法の概要|国税庁、電子取引データの保存方法をご確認ください|国税庁
フリーランスが領収書を発行する際のポイント
領収書の発行については、民法第486条でも定められており、フリーランスの場合も適用されます。
弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。
民法第486条・領収書の交付請求等|e-Gov法令検索
相手が領収書を請求してこない場合、発行する必要はありませんが、求められたなら応じなければなりません。いざその時になってから慌てることがないよう、発行時のポイントを確認しておきましょう。
領収書の書き方
領収書の書式には厳格な決まりはなく、市販の領収書に手書きしても、パソコンで作成してもかまいません。しかし、記入時には注意すべき事柄があります。
領収書の日付を記入
領収書の日付には、実際にお金を受け取った日を記入します。成果物の納品日や取引完了日、請求書の提出日とは異なるので注意しましょう。
ただし、年末や月末、期末をまたいでの取引であった場合、クライアント側の経理処理の都合から、日付を調整してほしいと言われるケースもあるものです。このような時はクライアントと内容を打ち合わせ、希望された日付を入れた領収書を提出します。
面倒だからと日付を空白にした状態で渡すのは、改ざんの恐れがあるため禁物です。必ずこちらで日付を記入しましょう。
領収書の宛名を記入
領収書の宛名は、誰からの支払いに対するものであったかを明確にしなければなりません。したがって、未記入や「上様」といった表記は避けましょう。
宛名が不明瞭な領収書であると、税務上、正しい書類と認められない可能性があります。
宛名には相手の名前や屋号、会社名を正確に書きます。ビジネスマナーの観点から(株)や(有)といった略称は使わず、「○○株式会社」なのか「株式会社○○」なのかも正確に書きましょう。
受け取った金額を記入
金額は領収書の中心あたりに、大きく、ハッキリと正確に書きます。
金額の改ざんを防ぐため頭に「¥」または「金」、末尾には「-」、金額は3桁ごとに桁区切りの「,」を入れます。例えば、10万円受け取ったなら「100000円」ではなく、「¥100,000-」や「金100,000-」と書きましょう。
なお、受け取った金額に消費税が含まれ、消費税額を記載する場合は、税込額を記入し、「うち消費税○○円」と書き添えます。報酬が10万円でそこに消費税をプラスした額を受け取ったなら「¥110,000-(うち消費税10,000円)」という書き方になります。
但し書きを簡潔に記入
受け取った金額が何に対してのものであったのかを明確にするため、「○○代として」などの但し書きを記入します。
但し書きは、具体的かつ簡潔な書き方が重要です。ライターとして記事執筆を頼まれた分の報酬なら「原稿代として」や「記事作成費として」などの書き方になります。エンジニアとしてシステム開発した際の報酬なら「○○開発費用として」、コンサルタントとして業務相談を受けた際の報酬なら「○○の相談料として」といった書き方になるでしょう。
発行者の名前や住所を記載
領収書には、誰が発行したのかを明確にするため、発行者の名前や住所も記載しましょう。住所は仕事をした場所や取引場所ではなく、事業所としている住所を書きます。
市販の手書き領収書を使う場合、毎回住所を書くのが手間に感じるでしょう。この場合、住所印を作って押印しても問題ありません。
捺印・押印はなくてもよい
法律上、領収書に発行者の印鑑は不要であり、印鑑が押されていなくても無効にはなりません。しかし、領収書を渡す相手によっては、印鑑を押してほしいと言われるケースもあります。
日本ではハンコ文化が根強く、押してある方が正しい、押してある方が丁寧とする価値観も珍しくありません。クライアント側企業の社内文化として、印鑑がない領収書であると受付けてもらえない場合もあるので、相手が必要とするなら印鑑を押した領収書を用意します。
領収書に押す印鑑はシャチハタの認印でも構いませんが、より丁寧な印象を与えるなら、屋号や社名の入った印鑑などを使いましょう。
収入印紙が必要な場合は注意
5万円以上の金額を受け取った際の領収書には、収入印紙の貼付けが必要です。収入印紙の金額は、受け取った金額によって変化し、例えば5万円以上100万円未満なら200円の収入印紙を貼付けます。収入印紙が必要な領収書に必要な金額分を貼付けていないと、脱税にあたります。
ただし、領収書を電子発行している場合は印紙不要になります。これは、印紙税が紙に印刷された文書に対して課せられるものであるため、領収書や契約書を電子化している場合、印紙はいりません。
費用や印紙を買いに行く手間を省けるので、電子領収書を使いたいところですが、クライアント側に確認するようにしましょう。もし、紙で提出してほしいと求められたなら、領収書に必要な額の収入印紙を貼付け、割り印を押して提出します。
参考:金銭又は有価証券の受取書、領収書|国税庁、国税庁の見解|国税庁
発行した領収書は控えを保管
領収書を発行する場合は、提出用と控えの2部を発行し、控えを保管します。なお、収入印紙が必要なのはクライアント提出分だけです。
手書き領収書の場合、市販されている複写式のものを使うと、2枚書いたり控えを取ったりする手間を省けます。
発行した領収書に誤りがあった場合の対処法
発行した領収書に誤りがあった場合、速やかに回収して訂正、または再発行します。
回収が面倒だからと相手に破棄をお願いし、新しく発行したものを渡してしまうと、相手側は2度支払いがあったとして処理する恐れがあります。余計なトラブルを避ける意味でも、誤りのあった請求書は自身で回収しましょう。
領収書を訂正する場合、二重線と訂正印を使います。修正ペンや修正テープの使用は、正式な訂正方法と認められないので注意しましょう。
なお、回収した方の領収書は安易に廃棄せず、誤りであると分かるよう大きくバツをつけるなどして、残しておきます。
領収書の再発行を求められた場合
領収書は代金の支払いを証明し、二重請求や二重払いを防ぐ存在でもあるため、再発行すると本来の意味がなくなります。また、再発行する場合も、金額に応じた収入印紙が必要です。
領収書を紛失した際、お店に再発行をお願いしても断られるケースがあるように、クライアントから再発行を頼まれた場合、断っても問題ありません。
しかし、どうしても断れない時や、断って角を立てたくない時もあるでしょう。やむを得ず再発行対応をするなら、発行し直した領収書が再発行分であると分かるよう明記します。
また、再発行を頼まれてのトラブルを避けるため、領収書の再発行には対応していない旨を、事前に伝えておくのもよいでしょう。
クレジット払いやキャッシュレス決済は領収書不要
クレジット払いやキャッシュレス決済での支払いは、両者が直接お金をやり取りしておらず、間にカード会社やサービス提供会社が入っての取り引きとなります。
領収書は代金の支払いと引き換えに、代金を受け取る相手に対して発行を依頼するものとされるので、こうした決済方法の場合は不要です。お金が支払われた根拠としては、利用明細も使えるので、わざわざ用意する必要がありません。
それでもクライアントから領収書を発行してほしいと頼まれた場合は、支払い方法がクレジットカードやキャッシュレス決済であった旨が分かるようにして発行します。領収書の金額や但し書きに添える形で「クレジット払い分」「○月○日キャッシュレス決済」などと書くと良いでしょう。
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領収書はポイントを押さえて、正しく保管・発行しよう
フリーランスは確定申告時の資料として、領収書が必要です。正確に処理できるよう、領収書に問題がないかチェックし、適切に保管しましょう。
また、クライアントから受け取った報酬について、領収書の発行を求められたら対応する義務が発生します。発行が必要なときに慌てることがないよう、書き方を確認しておきましょう。
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