コンサルティングのスキルもそれなりに身についたし、「独立するなら相談して!」と言ってくれる取引先もいる。自分も「そろそろ…」とは思うけれど、一歩踏み出せずにいる人は少なくないのではないでしょうか。仕事は確保できるのか、生活を維持できるのか、将来は…などなど、フリーランスならではの「不安定な部分」は不安や心配の要因となり、決断を遅らせてしまう…という気持ちもわかります。

しかし、フリーランスとして働く日々は、こうした不安や心配ばかりではなく、「独立してよかった!」と思う場面もたくさんあります。実際、筆者もそうですが、筆者の周りにも「もう会社員には戻れない…」と話すフリーランス仲間はたくさんいます。そこで今回は特に精神面から「フリーランスを選んでよかった」と感じる部分はどこなのか、実際の声を交えながらご紹介します。ぜひ独立すべきか悩む、決断できずにいる…という時の参考にしてみてください。

自分のペースで働き、自分のペースで休める!

フリーランスはクライアントから仕事を依頼される時に「納期」だけ指定されます。その納期さえしっかりと守れば、働く時間や曜日、場所などは基本、自由。「この日は家族との時間を作りたい」と思ったら、自分で前後のスケジュールを調整すれば良いのです。しかし会社員となればそうはいきません。いまでこそリモートワークも導入されましたが、基本は月曜日から金曜日までオフィスに出社し、たとえ閑散期など仕事量が少ない時にも定時まではきっちり仕事をしなくてはなりません。

実際、フリーのWebコンサルタントとして活動している友人も、会社員時代を振り返って「業務量が少ない時も、毎日会社に行って、しかも上司が帰らないとなんとなく帰りにくくて結局帰りが遅くなる…。あの感じがストレスでしかなかった」といいます。

しかしフリーランスは「決められた時間に出勤する」ということもなければ、「平日に休みが取りにくい」などと悩むこともありません。日曜日の夜に「明日からまた会社か…」と、思わずため息をつくなんてこともありません。筆者も個人的にこうした「時間の使い方を自由に決められる」ことは、フリーランスで働くことの最大のメリットだと思っています。

特に筆者などは野球観戦にライブにと、遠征も厭わないほどの熱量で行くタイプ。会社員時代は、「行きたい!」と思う大きなイベントや試合があっても「さすがに平日の夜は無理」とか「会議があるから休めないし…」など、友人からお誘いがあっても、ほとんどお断りしていた記憶があります。しかし、フリーランスとなり、その仕事が軌道に乗った今は、「これだけは行きたい!」と思う試合やライブがあれば、そこに合わせて自分でスケジュールを調整し、ほぼあきらめることなく足を運べるようになりました。そのためには連続での徹夜など、多少の無理をすることもありますが、「好きなものを諦めなくていい」という喜びの方が大きく、ほとんど苦になりません。

また前出のWebコンサルタントの友人も、鉄道とカメラを好む、いわゆる「撮り鉄」を趣味としていますが、独立してからはだいたい月に一度のペースで遠方まで出かけては撮影を楽しんでおり、「仕事が忙しい時もあるけれど“楽しみなこと”があるから頑張れるし、定期的にストレス発散できるのは大きい」と言います。こうした趣味や家族との時間など、会社員時代はなかなか優先してできなかったことができるようになることもフリーランスならではのメリットではないでしょうか。

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興味がない、苦手な相手との仕事は「断ればいい!」

社員として会社に属している以上、会社や上司から命令された仕事を「断る」という選択肢はほとんどないと思います。依頼された仕事の内容が「何度やっても興味が持てない」とか「取引相手の方とうまくコミュニケーションが取れなくて辛い」となっても、超お得意様からの依頼であればもちろん断ることはできませんし、上司や同僚から「我慢しろ」と言われてしまえば何も言い返せません。

会計事務所での勤務を経て、経営コンサルタントとして独立・開業した知人も、会社員時代は取引先の担当者との関係づくりには「だいぶ悩まされた」と話します。

「自分が担当した企業は、大手建設会社の下請け会社で、経営状態も経理システムもしっかりしており、本来やるべき業務内容で苦労する部分はほとんどなかったのですが、とにかく担当者が非常に体育会気質の強い方で…。到底無理なスケジュールで仕事を依頼してきて、それをお断りすると「なぜできないのか?」と強い口調でお叱りを受けることも少なくありませんでした。また、毎年年末年始や半期決算のタイミングで「慰労会」と称した飲み会を用意してくださるのですが、苦手なお酒を無理に勧められることも多く、お誘いの季節が近づく度に気が重かったですね」

仕事をする上では、業務内容や人間関係、労働時間や業務量など、実にさまざまな部分で少なからず「我慢」や「忍耐」が要求される場面があるでしょう。それはフリーランスでも同じことで、依頼された仕事が「最初に聞いていた内容と全然違う」「担当者からの指示がいい加減過ぎて、何度もやり直しさせられた」なんてことも、正直、たくさんあります。

しかし、決定的に違うのは、フリーランスの場合、一度仕事をして「合わない」「今後は取引を避けたい」と思ったら、自分の意思で仕事を断ることができるという点にあります。仕事の依頼が来ても「スケジュールが合わないので…」と伝えれば、だいたいのクライアントは引き下がりますし、それが何回か繰り返され「この人は忙しくて依頼しても受けてもらえない」と認識されれば、仕事の依頼もなくなり、関係も自然消滅していきます。

また、それは依頼内容を聞いて「この分野にはあんまり興味がない」「苦手な内容だな」と感じた時にも同じことがいえます。会社員時代であれば、苦手でも、興味がなくてもその仕事を全うしなければなりませんが、フリーランスの場合は素直に「その分野はあまり得意ではないので…」とお断りしても、とがめられることも、相手を不快にさせることもありません。むしろ「仕事が欲しい!」と専門外の仕事を安請け合いして相手が満足できるレベルの成果を提供できないことの方が迷惑になりますので、素直にお断りした方が賢明です。

もちろん、フリーランスは請け負った業務量がそのまま収入に直結しますから、ちょっとのことで腹を立て「もう仕事は受けない!」と次々に断っていたら、フリーランスとして働くこと自体が難しくなってきます。でもはじめから苦手な仕事内容だと分かっている、二度、三度と一緒に仕事をやってみてどうしてもつらい・仕事内容が合わないと感じるようであれば、無理せず「お断りする」ことも、ストレスをためずに仕事を続けるためのフリーランスならではの特権です。

ただし…一度依頼を断り、自然消滅状態になった依頼主から「再び仕事を依頼してもらう」ことは、新規に仕事を依頼してもらうこと以上に難しく、パワーが必要となります。後々後悔することのないよう、「このクライアントからの仕事を断るべきかどうか」はくれぐれも慎重に決めるようにしてください。

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収入に対する不安は大きいが、「不満」は少ない!

独立してフリーランスとなることに躊躇する人が多い理由の大部分は、ほぼこの「収入」の面での不安からではないでしょうか。仕事の量が少なくても毎月決まった額の収入が保証されている会社員と違い、フリーランスは仕事をした業務量が収入に直結します。特に独立直後は、仕事があってもすぐに報酬として入るわけではないので、収入はびっくりするくらい下がります。

実際、デザイナーとして独立した友人も「最初は収入が少ないよ…と妻には伝えていたけれど、実際に収入が1万円くらいしかなかったときは、『本当に大丈夫?』と本気で心配されてしまった」と話すように、安定しない収入に不安になることもあると思います。

しかし仕事の依頼数が安定してくると、やっただけ、がんばっただけ、当然月の収入も増えていきます。最初は月1万円の収入からスタートしたデザイナーの友人も、会社員時代は「深夜まで作業が続いても、給与に固定残業代が含まれていたから支給額がほとんど変わらない。同僚とよく『自分たちの給料を時給換算したらいくらになるのかな?』とか、笑い話にしていた」そうですが、フリーランスとしての活動が波に乗った今は「もちろん月ごとにある程度の差はあるけれど、仕事をすればその分だけしっかり収入として入ってくるので、不満はなくなった」と話します。

また、経営コンサルタントとして活動している友人はフリーランスとなってから「自分の“単価”を自分で決められるようになったことでストレスがなくなった」といいます。

会社員時代は「繁忙期と閑散期の差が激しいうえ、一人ひとりのキャリアや能力によって担当する企業数や規模にも大きな差があった」そうですが、毎月支払われる金額は「常に一緒」。一応、年度ごとの昇給もありましたが、「完全な年功序列で、業務への貢献度や任されている仕事ではなく在籍年数で役職も給与も決まるのがわかっているので、モチベーションも上がりませんし、途中で退職する人も多かった」と、振り返ります。

しかしフリーランスとなってからは、依頼される仕事の内容、期間、業務量を確認したうえで見積もりを作り、お互いに納得したうえで仕事を受けているので、たまに「もう少し請求しても良かったかな…」と思うことはあっても、ストレスを感じることはないのだとか。

なお、よく「フリーランスの方が稼げる」という声もありますが、収入の「額」に関しては、業務内容や量によってまちまちですので、正直、「増える!」と断言はできません。実際、筆者の周りにもこのコロナ禍の経済活動停止期間を乗り越えることができず、廃業してしまったフリーランス仲間がたくさんいます。しかし、独立・開業を選んだことで、会社員時代よりも収入がアップし、フリーランスという働き方に満足している人が多いのも事実。成功するか失敗してしまうかは、本当に本人の努力(と若干の運)次第といえます。

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「無駄」だと感じる人間関係をシャットアウトできる

そして最後に「フリーランスのメリット」としてあげるとしたら、やはり人間関係に悩むことがほとんどないという点でしょう。

会社員として働く中では、どうしても意見や考え方が合わない、正直、できればあまり接点を持ちたくないという上司や同僚もいるでしょう。またあまり乗り気のしない飲み会や食事会に誘われて断り切れないということも一度や二度ではないはずです。実際、IT系コンサルタントとして活動する知人のように「会社員時代、仕事の後の上司からの誘いだけでなく、歓迎会や送別会、忘年会など、あまり接点のない人たちも交えての飲み会も好きではなかった」と話す人は少なくありません。経営コンサルタントの友人も「会社の人と飲みに行ってもほとんど出てくるのは仕事や上司、取引先などへの愚痴や不満ばかり。毎回、何が楽しくて飲んでいるのだろうと思いながら付き合っていた」といいます。

しかし、フリーランスは基本「一人」ですから上司もいなければ同僚もいません。また、仕事関係の人から「飲みに誘われる」ということもほとんどありません。もしお誘いがあった場合も、強制ではないので、自分の意思で参加する・しないを決めることができますし、仕事をする上で「人間関係で悩むことはほとんどない」といえます。

会社の飲み会はたった2時間の開催だとしても、その2時間をほとんどストレスの中で過ごしていたなら、それは人生においても「無駄な時間」でしかありません。もちろんそうしたお付き合いの中で多くの人との関係を築き、学ぶこともあります。ただ、自分の意思に反して強制的に参加しなければならない、もしくは気が重くなるようなお付き合いに悩む必要がないというのは、フリーランスだからこそのメリットだといえるでしょう。

・・・いかがでしょうか。

フリーランスはどうしても自分で仕事を確保しなくてはならない、収入が安定しないというイメージが強く、「不安定で大変」と思われがちです。それも事実であり、確かに何から何まで自分で考え、解決しなければならないので、「誰でも成功できる!」といったお勧めはできません。

しかし、そうした不安定さ、大変さを凌駕する「自由」というメリットがあり、業務が軌道に乗りさえすれば、本当にストレスなく、楽しく、やりがいも感じられる魅力ある働き方でもあります。スキルには自信がある、でも人間関係や自分への評価、任される仕事内容に強いストレスを感じている…なら、思い切って一歩踏み出してみるのも「アリ」ではないでしょうか。