フリーランスがスキルアップするために「壁打ち相手」は最適です。壁打ち相手とのやり取りを通して、スキルアップになるのです。ではどのように壁打ち相手を選べばよいでしょうか。また壁打ち相手を決める際の基準は何でしょうか。

この記事では壁打ち相手を選ぶ方法と選ぶ基準について説明します。

壁打ち相手を見つけることでスキルアップに繋がる

壁打ちはテニスなどで壁にボールを打つところから来ています。テニスであれば、壁にボールを打つとボールが返ってきて、そのボールを打ち返す練習をします。フリーランスの場合、相手は壁ではなく人間です。

人間相手にディスカッションをするのが壁打ちなのです。壁打ちのテーマはビジネスについてになります。新しいビジネスや既存のやり方や考え方について相手とディスカッションしながら、内容を修正していきます。内容の修正であれば自分一人で出来ると考えているフリーランスの方もいるかもしれません。

しかし自分一人では考えつかないようなアイデアが、壁打ちによって出てくることは多くあります。なぜそのようなことが起こるかというと、自分が想定していないような質問や意見があるため、それに答えているうちに異なる考えが生まれ、新たな発想が出来るからです。

以前、私はある中小企業の社長に壁打ち相手になってもらったことがあります。その社長には目の前の相手の悩みを解決する重要性を言われました。当時、私は相手の悩みを解決するよりも自分の売りたいものを売ろうとしていたのです。

今思えば、「相手の悩みを解決するためにサービスを提供するのは当たり前だ」と思うのですが、当時は自分の作ったものの必要性が相手にも理解され、売れるに決まっていると思っていたわけです。

こうした勘違いは自分だけがするわけではありません。自分の知人のプログラマーも自分が良いと思うイーラーニングのシステムを作りましたが、自分のこだわりばかりが強く、結局使い勝手が悪く売れませんでした。自分が良いと思うものと相手が必要としているものがマッチしなかったわけです。

こうしたことは意外と多く起こり得ます。事業に失敗はつきもの。事前に失敗の可能性を潰しておくためにも、壁打ちは非常に重要な手段のひとつなのです。

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壁打ち相手を見つける4つの方法

壁打ち相手を見つける方法としては以下の4つがあります。

仕事上の知人、友人に頼んで見る

壁打ち相手として仕事上の知人や友人に頼んでみるのも良いです。仕事上の知人や友人は身近であるため、気軽に壁打ち相手として頼みやすいでしょう。私は知人から壁打ち相手を頼まれることもあります。

私に壁打ちを頼んだITコンサルの知人は、自分のことを分かってくれているからだと言っていました。壁打ち相手を一から探すと大変で、しかも全く知らない人だと事前情報の提供と理解が必要となるため、壁打ちが難しいと思ったようです。

確かに私は彼のことをよく知っていますし、ディスカッションもお互い遠慮せずにできます。私が彼にアドバイスしたのはまず相手に向き合うこと。そして「説得」ではなく相手が「納得」できるような営業をすることです。

自分の商品に自信があると、その商品の良さを説明して、相手を説得しようとします。しかしそれでは上手く行きません。相手が納得してサービスを購入してくれること。そのために相手に向き合うべきなのです。

このようなアドバイスを取り入れた彼は集客が上手く行きはじめ、売上も増えてきたようです。人間関係を築くのが苦手な人は、知人や友人に壁打ち相手を頼むのが良いでしょう。

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ビジネス関係のセミナーやコミュニティに参加する

ビジネス関係のセミナーやコミュニティに参加して、壁打ち相手を見つける方法もあります。興味のあるビジネス関係のセミナーやコミュニティであれば、自分の仕事に近い人たちも多いはずです。

自分の経験をもとに壁打ちをお願いすると、今まで思いつかなかったような意見が聞けます。自分はビジネス交流会で知り合った人に壁打ちをお願いしたことがありますが、その際にやり取りをする中で、自分が本当にしたいことは何かに気づくことができました。

私の場合、何のために誰のためにサービスをするのかの軸がしっかりできていませんでした。それをこのビジネス交流会で会った相談相手とのやり取りで気づけたのは、非常に大きかったです。この相談相手はビジネスの経験が長かったので、さまざまな知見があったから助けられました。

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就職・副業サイトで募集する

就職や副業サイトで募集する方法もあります。企業の事例ですがWantedlyで壁打ち相手も募集していた企業があります。そこに応募したことがありますが、これから新規事業を始めるにあたって、壁打ちをしたいとのことでした。

Wantedlyは企業が人材募集で使っているサイトです。その為フリーランスが壁打ち相手を探すなら、クラウドソーシングのサイトなどで募集しましょう。例えばランサーズでも壁打ち相手を募集している人がいます。その案件はアプリ開発に関するものでした。

依頼された企業からの条件を満たすためにアプリとして、どのようなものを開発すれば良いか。IT関係のフリーランスの方に対して開発する際に壁打ちして方向性を模索したかったのでしょう。

このように壁打ち相手を簡単に見つけたい人は、就職や副業サイトを上手く活用することをお勧めします。

企業に依頼する

今は壁打ちを仕事として受けている企業もあります。壁打ちを専門で行っているため費用は高額ですが、方法論を用いて壁打ちを行ってくれます。いわゆる壁打ちのプロです。なかなか良い壁打ち相手に巡り合えない場合は、企業に依頼するのもひとつの方法です。

月額費用によってサービスの内容が変わるので、予算内で出来るかどうかまずは考えてみましょう。

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壁打ち相手を決める4つの基準

壁打ち相手の見つけ方についてはすでに述べましたが、その候補の中から選ばなければなりません。もちろんひとりである必要はありません。ただどのように選べばよいのか、以下の4つの基準をもとに壁打ち相手を決めてみましょう。

対等の立場でなくてもいい

壁打ち相手も決める際には対等の立場である必要はありません。壁打ちはディスカッション中心なので、対等でないと議論ができないと考える人がいるかもしれません。しかし重要なのは考えを深めることです。ディスカッションではなく、質疑応答のような形でも十分思考は深まり、気づきもあります。

私はベンチャー企業の経営者を壁打ち相手にお願いすることも多いです。経営者には自分の経験のみで話をする方もいます。しかしベンチャー企業の経営者は常に新しいことに挑戦しています。その為考えも柔軟な方が多いです。

立場としては全く対等ではありません。その為ディスカッションというよりも質疑応答になります。しかし想定したような回答は返ってこず、新たな視点を与えてくれることにいつも驚かされます。私は今から6年前の40歳の時、あるベンチャー企業の社長に壁打ちをお願いしたことがありました。

そこで言われたことはとても新鮮で衝撃的でした。例えば値決めの問題。どうしても顧客が少ないと値段を下げようとしますが、その社長だけは値段を上げなさいと言いました。

つまり顧客が少ない以上、単価を上げることで顧客が少なくてもビジネスとして成立するようにしなさいということだったのです。私にはただでさえ顧客が少ないのに、値段を上げたらさらに少なくなるのではないか。そうした不安がありました。

しかしその社長は「値段が高いものはいいものだから買う」という層がいて、その値段にあったサービスをきっちり提供することが大事だと言ったわけです。その助言をすぐに受け入れたわけではないですが、結局単価は高くして提供する決断をしてビジネスはうまくいきました。

このように対等な立場で無かったがゆえに、良いアドバイスが貰えて、思考が深まったわけです。

友だちではなくビジネス上の関係に出来るかどうか

壁打ち相手を決める際にはビジネス上の関係として付き合えるかどうかも大切です。壁打ちはあくまでもビジネスについて。プライベートの相談は相談相手を探せばよいです。壁打ち相手には金銭や食事や飲み代等の何らかの報酬もしっかりと払い、相手からもしっかりとサービスを受けられるビジネス上の関係でなければ、良いディスカッションはできません。

私自身、知人の壁打ち相手も無料で引き受けたことがあります。ビジネスのアイディアについてディスカッションしたのですが、相手の考えが深まっていく気がしませんでした。結局、壁打ちではなく単なるおしゃべりのようになっているわけです。

ビジネス上の関係になると、報酬を払っているため、依頼者も真剣です。また壁打ち相手も報酬に見合ったものを提供する必要があります。ビジネス上の関係として報酬を払ってサービスを受けても良い相手を壁打ち相手に選びましょう。

傾聴力がある人

壁打ち相手の資質として重要なのは傾聴力です。ディスカッションをして考えを深めていくのが壁打ちの目的です。人の話を聞かないで自分の主張だけをされると壁打ちになりません。あくまでも相手の話を踏まえた上での持論の展開である必要があります。

その為相手の話を聞く力、傾聴力がある人を探さなければなりません。傾聴力のある人は以下の3つの特徴があります。

1.相手の話をさえぎらない

傾聴力のある人は相手の話をさえぎりません。相手の主張をしっかりと聞いたうえで自分の意見を言ってくれます。よく話の途中で「それは違う」という人がいますよね。そうした人は壁打ち相手には向かないので選ぶのはやめましょう。

2.相手を気持ちよく話させる

傾聴力のある人は相手に気持ちよく話させます。私の壁打ち相手はジェスチャーが非常に上手です。少しくらいオーバーな方が相手にも伝わりますし、大きく相槌を打たれると気持ちが良くなります。

実際に私の壁打ち相手に聞いたところ、相手が気持ちよく話せるようにジェスチャーはオーバーにやっているとのことです。オーバージェスチャーによって私も気持ちよく話せ、違った意見を言われても気持ちよく受け入れられます。結果的に考えも深まるという好循環が生まれるわけです。

3.相手の話の内容を理解しようとする

傾聴力のある人は相手の話を理解しようとしている人です。相手の話を理解しようとしている人は、質問が上手です。その質問に答えているだけで考え方が深まることもあります。

私は人事コンサルをやっている方に壁打ちをお願いしたことがありますが、その方の質問によって自分がビジネスで本当にやりたいことは何なのか、気づかされたことがあります。ある意味、質問へのやり取りがディスカッションとなり、壁打ちにすでになっていたわけです。

質問が出来る人は相手が本当に考えていることを理解して、質問によって気づかせてくれます。上手に相手に質問をして話を聞いてくれる人は傾聴力があり、壁打ち相手としても最適なのです。

自分では気づかない指摘をしてくれる

自分では気づかなかった指摘をしてくれるのも壁打ち相手として重要な要素です。自分の意見に対して、同意ばかりでは壁打ちになりません。壁打ちをいろいろな人にお願いした経験上、自分では気づかない指摘をしてくれる方は以下の3つの特徴を持っている人でした。

1.自分とは別業界の人

自分と同じ業界だと新たな気づきが生まれにくいです。同じ業界だと、「長く続けること」「積み上げが大事」というアドバイスが多く、今から売上を伸ばそうという人には当たり前に思えてしまいます。また同業種だと今までのビジネスの延長上でのアドバイスになりますので、目新しいものはありませんでした。

その為自分では気づかない指摘をくれる人としてはあえて別業界の人がいいです。別業界の人で自分なりの考えを持っている人を探してみましょう。

2.常に新しいことに挑戦している人

常に新しいことに挑戦している人は発想も新しいため、自分では気づかない点を指摘されることが多いです。新しいことに挑戦していると、新しい情報も入ってくるからです。また新しいことに対しても拒否反応を示しません。

私は事業を始めるときにプレゼンをする機会が多くありました。新しいことに挑戦していない人は、新規事業に対して想像力がないのか、否定的な意見しか出ません。一方、新しいことに挑戦しているフリーランスは、私がプレゼンした際にどうすればさらに良くなるか真剣に考えてくれました。

プレゼンという形で自分の事業について話してみて、マイナスの意見しか言わない人は新しいことに挑戦していない人です。反対に面白がって一緒に考えてくれる人は新しいことに挑戦している人なので、そういう人を壁打ち相手に選びましょう

3.自分で事業をしている人

自分で事業をしている人は、仕事に対して常に真剣に向き合っています。もし事業がうまくいかなければ、自分が生活できないだけでなく、家族や社員も路頭に迷わす危険があるわけです。

自分のウェブコンサルの知人はビジネスのやり方について、IT会社の社長に壁打ちをお願いしていました。そのディスカッションで、ウェブコンサルの中でもどこに強みがあるのか明確になったそうです。そこを前面に押し出して、フリーランスとして成功しています。

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壁打ち相手は複数いてもいい!!

壁打ち相手は、一人である必要はありません。自分の事業についてディスカッション出来る人が複数いることで、考えはより深まります。私も少なくとも3人は壁打ち相手がいます。それぞれ違った指摘をしてくれるため、非常に役立つわけです。

壁打ち相手は複数いてもよいので、自分の考えを深められる相手を見つけて、継続的に壁打ちをしていきましょう。