建設・建築コンサルについて、どんな仕事をしているのか知らない人は多いのではないでしょうか。この記事では、建築コンサルの仕事内容や魅力について解説します。
平均年収や将来の需要についても解説するので、これから建築コンサルを目指す人は、参考にしてください。
建築コンサルとは
建築コンサルとは、住宅やビルなどの整備や事前調査、計画立案などをクライアントに提案する仕事です。整備や事前調査であるため、実際に着工する前段階の業務がメインとなるでしょう。
専門性の高い仕事であり、国や行政との関わりもある仕事です。他のコンサルタントと比べると、大きなやりがいを感じられます。
建築と建設の違い
まずは、混同しやすい「建築」と「建設」について、具体的な違いを知っておきましょう。
実際には、建築と建設が明確に分かれていない場合もあります。そのため「建築コンサル」としていても、建設が含まれている場合もあるでしょう。具体的な違いとしては、以下のとおりです。
- 建築……住宅やビルなどの建物
- 建設……ダム・河川・道路なども含む土木分野の工事まで含む
日本語の違いともとれるので、本記事では「建設」の意味も含め、建築コンサルについて解説します。
建設・建築コンサルの仕事内容
建設・建築コンサルは、大きく分けると設計系と営業系に分かれます。しかし、一般的に建築コンサルとしての仕事は設計系であるため、以下では設計系の仕事内容について触れていきましょう。設計系の主な仕事内容は、以下のとおりです。
- 計画……事業概要の策定
- 測量・調査……地形の測量・環境保全の調査
- 補償……用地の確保(買収)
- 設計……構造決め~図面作成
一般的にコンサルタントというとデスクワークのイメージになりますが、建築コンサルについては、現場調査や視察などの外回りも多いです。
建設・建築コンサルの平均年収
建設・建築コンサルの平均年収は、約500万円です。下は年収300万円ほど、上になると800万円ほどになります。しかし、業種や企業規模、役職によっても年収は異なるので、それぞれの年収の違いも見ていきましょう。
以下で「業種別」「企業規模別」「役員別」の年収例を紹介します。また、参考として建築コンサルタントの売上高ランキングも見てみてください。
業種別平均年収
建築コンサルでは、主に「コンサルタント業務」「応用地質」「施行計画」の3つに分けられます。それぞれの平均年収の違いは、以下のとおりです。
- コンサルタント業務……平均年収500万円
- 応用地質……平均年収460~740万円
- 施行計画……平均年収440~620万円
年収の高さで選ぶのであれば、最も平均年収の高い応用地質ができるように、応用地質学を学んでおきましょう。
企業規模別平均年収
会社の企業規模によっても建築コンサルの年収は異なります。以下では、3つに分けて平均年収を見ていきましょう。
- 大手企業(従業員301人以上)……平均年収600~650万円
- 中小企業(従業員50人以上)……平均年収490~560万円
- 零細企業(従業員50人未満)……平均年収350~420万円
大手企業と零細企業では、最大で300万円ほど年収の差があります。零細企業の建築コンサルでは、それほど高い年収は見込めないかもしれません。
役職別平均年収
役職や雇用形態によっても平均年収は異なります。以下は、非正規社員も含めた平均年収例です。
- 非正規社員(派遣社員)……平均年収230~290万円/平均時給1,599円(参照元:求人ボックス)
- 主任……平均年収542万円
- 係長……平均年収675万円
- 課長……平均年収892万円
- 部長……平均年収986万円
非正規社員(派遣社員)だと年収は下がってしまいますが、大手企業の部長クラスになれば、年収1,000万円も目指せます。
建設・建築コンサルタント売上高ランキング
年収の参考として、建設・建築コンサルタントの売上高ランキングを紹介します。以下は2022年4月に発表された情報です。
会社名 | 売上高(百万円) |
日本工営 | 58,427 |
パシフィックコンサルタンツ | 51,358 |
建設技術研究所 | 46,636 |
オリエンタルコンサルタンツ | 26,865 |
オリエンタルコンサルタンツグローバル | 22,867 |
エイト日本技術開発 | 22,051 |
日水コン | 21,674 |
八千代エンジニヤリング | 21,650 |
JR東日本コンサルタンツ | 21,586 |
バスコ | 21,335 |
上位5位内の企業で40~50代で役職が高くなれば、年収1,000万円も超えられるでしょう。
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建設・建築コンサルの将来性
建設・建築コンサルの将来性について解説していきます。建築コンサルに限らず、職業の将来性について不安に感じる人もいるでしょう。
以下では、建築コンサルの現状から将来性を見ていきます。建築コンサルという仕事に不安を感じている人は、将来性を確認した上で転職を検討しましょう。
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業界の需要
建築コンサルの需要は、年々縮小傾向にあります。建築コンサルは公共事業に携わるため、官公庁などの動向に影響を受けるからです。そのため、公共事業投資がピークを過ぎた後は、一時的に縮小しました。
しかし、現在はインフラ整備への需要が高まっているため、建築コンサルの需要も高まっています。
市場規模は決して大きくない
建築コンサルの市場規模は、0.5兆円と言われています。0.5兆円は、業界規模からすると少ない数字です。
しかし、オリンピックや万博などの公共工事があるため、2025年あたりまでは需要が続くと考えられます。2025年以降は需要が減ると考えられているため、多少の不安が残ってしまうでしょう。
建設・建築コンサルの高齢化
建築コンサルの大きな課題として、コンサル業界の高齢化があります。2022年現在、建築コンサルの平均年齢は40代です。20代などの若手が不足しています。
新卒採用に積極的に力を入れている建築コンサルもありますが、業界全体としてはまだまだ若手が少ないのが現状です。若手が少ない今がチャンスとも言えますが、同年代が少なく、年上ばかりになってしまうデメリットもあります。
建設・建築コンサルタントはきつい仕事?
建築コンサルは「きつい仕事」と言われる場合が多いです。きついと言われる大きな理由は、以下の3つ。
- 業務範囲が広い
- 常に新しい知識が必要
- 1人前になるまで時間がかかる
- 年上が多い
建築コンサルの業務範囲は、計画の立案から調査、設計業務から維持管理などとても幅広いです。ただでさえ覚える内容が多い上に、多種多様な案件を受けるために、新しい知識が必要になります。
さらに、1人前のコンサルタントとして認められるまでには5〜10年かかると言われています。40代以上の上司が多いなか、日々知識をアップデートしながら上司の指示に従って働くことに、ストレスを感じてしまう人もいるかもしれません。
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建設・建築コンサルに向いている人の特徴
建設・建築コンサルには、向き不向きがあります。人によってはきつい仕事と感じるため、合わないと感じる人もいるでしょう。
反対に、建築コンサルに向いているのは、以下のような性格の人です。
- 分析力がある
- 勉強意欲がある
- 体力と精神力がある
なぜ上記のような人が建築コンサルに向いているのか、以下で解説します。
分析力がある
建築コンサルは、あくまでコンサルティング業です。そのため、クライアントの課題を見つけ出し、解決に導かなければいけません。クライアントは、自分たちでは解決できない課題を抱えているから、コンサルに依頼しているのです。
また、なかには、課題自体に気付いていないクライアントもいます。建築コンサルは、上記のようなクライアントの課題を見つけ出し、解決しなければいけないため、観察力や洞察力、分析力が求められるのです。
勉強意欲がある
建設・建築コンサルは、常に勉強し続けなければいけません。建設・建築の世界で、理解しておくべき内容は幅広いです。工事や設計の知識はもちろん、政治や経済についても学んでおく必要があります。
建築に関する法改正があれば、早い段階でどのような変更があったのか知っておかなければいけません。「ここまで覚えたら問題ない」ということがない業界なので、常に勉強できるような勉強意欲のある人は、建築コンサルに向いています。
体力と精神力がある
建設・建築コンサルは、デスクワークから外回りまで行います。そのため、体力と精神力が求められる仕事です。
デスクワークでは、短期間で報告書や資料をまとめ、会議でクライアントに納得してもらわなければいけません。外回りでは、遠方への視察が発生するケースもあります。
常になにかしらの業務が発生するため、体を壊したり、精神的に耐えられない人は、建築コンサルには向いていません。
建設・建築コンサルに向いていない人の特徴
建設・建築コンサルは、ガツガツ働きたい人には向いています。しかし、以下のような人は、建築コンサルに向いていないと言えるでしょう。
- プライベートを大事にしたい
- ルーティンワークをしたい
建築コンサルは、拘束時間も長い上に、率先して行動したり学んだりしなければいけません。そのため、プライベートを優先したい人には向いていないと言えます。
また、建築コンサルに限らず、コンサルティングは、クライアントごとの課題に向き合っていかなければいけません。同じことを提案すれば良いルーティンワークではないため、柔軟な考え方が必要です。自ら率先的に動き、仕事に対してやりがいを感じられる人でなければ、建築コンサルは向いていないでしょう。
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建設・建築コンサルタントの魅力
建設・建築コンサルは、達成感の大きい仕事です。「きつい仕事」とも言われていますが、その分、大きなやりがいを感じられます。
以下では、どのようなやりがいを感じられるのかについて解説するので、建築コンサルについて不安を感じる人は、ぜひ参考にしてください。
仕事のやりがいが大きい
建築コンサルのやりがいは、主に以下の3つです。
- 社会貢献できる
- 達成感がある
とくに、道路や河川のような建設に携わるケースでは、社会貢献を強く感じられるでしょう。自分の携わった仕事で、多くの人の生活が便利になるので「誰かのためになっている」という想いを強く感じられます。
また、実際に工事を行うのは現場の職人ですが、それぞれをまとめてプロジェクトをコントロールするのは建築コンサルです。全体を把握しながら予定通りに進行できれば、強い達成感を得られるでしょう。
幅広い業務に携われる
建築コンサルの仕事の幅広さは、デメリットでもありますが、魅力とも言えます。毎日同じ業務の繰り返しではないので、仕事に対する飽きがありません。
また、出張なども多いため、仕事を通してさまざまな場所に行けるのも魅力の一つです。常に新しいことに挑戦し続けたい人には、面白い仕事と感じられるでしょう。
建設・建築コンサルに有利な資格
建設・建築コンサルには、必須の資格はありません。資格がなくても、建築コンサルとして働けます。
しかし、資格がない場合とある場合とでは、当然資格がある方が信用されますし、転職にも有利です。そこで、建築コンサルにおすすめの資格として「技術士」と「RCCM」を紹介します。
建築コンサルとしてキャリアを積んでいくのであれば、いずれかの資格取得を検討してみましょう。
技術士
技術士は、科学技術に関する知識と応用能力が認められる国家資格です。計画・調査・研究・設計をこなせる証明になります。
ただし、資格取得のハードルは高く、資格試験を受けるために、関連する業務に7年間従事しなければいけません。または、技術士補として4年以上の経験が必要です。
技術士試験の受験資格などについて以下の表にまとめたので、参考にしてください。
合格率 | 15〜20% |
受験資格 | 関連する業務に7年以上従事または技術士補としての経験が4年以上 (技術士第一次試験の受験資格はとくになし) |
受験手数料 | 11,000円 |
第一次試験科目 | 基礎科目:1時間/15点満点 適正科目:1時間/15点満点 専門科目:2時間/50点満点 |
第二次試験科目 | ・安全管理 ・社会環境との調和 ・経済性 ・情報管理 ・人的資源管理 +選択科目 |
RCCM
RCCMは「シビルコンサルティングマネジャー」の略で、技術士として業務の管理や照査を行える民間資格です。技術士よりも資格取得難易度は低く、合格率は約30%と言われています。
受験資格も容易ではなく、実務経験が必要です。RCCMの受験資格等については、以下にまとめたので参考にしてください。
合格率 | 約30% |
受験資格 | ・大学院修了者の場合は5年以上の実務 ・中学校卒業者の場合は14年以上の実務 |
受験手数料 | ・17,320円(クレジットカード払い) ・17,620円(コンビニ払い) |
試験科目 | ・受験する専門技術部門における自己の業務経験 ・業務関連法制度、技術者倫理及びその他建設一般 ・業務遂行のための業務管理技術力 ・土木関連の基礎的技術知識と受験する部門の専門技術知識 |
第二次試験科目 | ・安全管理 ・社会環境との調和 ・経済性 ・情報管理 ・人的資源管理 +選択科目 |
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これからの建築コンサルを支える人材を目指そう
建設・建築コンサルは、若手が少ない業種です。だからこそ、これから建築コンサルを目指せば、将来の建築業界を引っ張っていける人材になれる可能性があります。
少しでも建築コンサルに興味があるならば、ぜひ挑戦してみてください。きつい仕事ではあるものの、大きなやりがいを感じられる、魅力的な仕事です。
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