経営コンサルタントは専門的な知識が必要になるため「特定の資格が必要なのでは?」と考える人も多いでしょう。さらに、中小企業ともなると、独自のアプローチが必要になるため、より特殊な資格が必要だと思う人も多いはずです。

しかし、実際のところは経営コンサルタントになるために特定の資格は必要ありません。むしろ無資格でコンサルタントを名乗る人も少なくないでしょう。

ただし、クライアントから信頼を勝ち取るためには何らかの資格を保有しておくべきです。そこで、この記事では中小企業の経営コンサルタントになる際におすすめの資格を5つ紹介します。あわせて必要なスキルも紹介しているので参考にしてください。

中小企業の経営コンサルタントとは?

中小企業の経営コンサルタントとは、企業が抱える悩みを専門的な知見をもとに解決する仕事です。市場が飽和しつつある中小企業では独自の戦略を取らなければ、業績不振により経営破綻しかねません。

中小企業庁が発表している「倒産の状況」のデータでは、2021年の中小企業の倒産件数は6,030件にも及びます。前年より1,743件減ってはいますが、そもそも中小企業の数が減っているため、倒産件数が減っているだけです。

また、同資料が発表している原因別倒産状況では「販売不振」という原因が毎年圧倒的に多く、2021年においては全体の約73%を占めています。以上のような販売不振に陥る要因として考えられるのが企業として戦略不足です。

そこで、市場で生き残っていくための戦略を中小企業に対して授けるのが「中小企業経営コンサルタント」の役割です。中小企業が正しい戦略へと舵を取れるように具体的な戦略を提案し、企業の業績を最大化させます。

経営コンサルタントはコンサルティングファームと呼ばれる企業に属するのが一般的です。クライアントが求める結果にすり合わせる力が必要であるため、戦略的な考え方が求められます。

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中小企業の経営コンサルタントの仕事内容は?

中小企業の経営コンサルタントの仕事内容は以下の通りです。

  • 経営課題の発見…経営状況を顧みたうえでの課題発見
  • 経営課題の解決…マーケティングから経営戦略まで多岐にわたる
  • 財務状況の改善…運転資金の創出やコスト対策など

以上のように中小企業の経営コンサルタントの仕事内容は多岐にわたります。コンサルティングといえば「課題の発見」のみをイメージする人も多いですが、経営コンサルにおいては「課題の改善に対するアドバイス」まで提示するのが一般的です。

そのため、企業の財務諸表を読み解く力はもちろん、社会情勢まで加味しなければいけません。その業界に関する知識にとどまらず、さまざまな分野の知識が求められるでしょう。

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中小企業の経営コンサルタントの平均年収

中小企業の経営コンサルタントに関しては明確な平均年収が公開されていませんが、厚生労働省が発表している「令和3年賃金構造基本統計調査」が参考になります。

同資料によると、経営コンサルタントは「学術研究,専門・技術サービス業」分野に分類されていて、平均賃金が386.9千円と記されていました。同資料の一般労働者の平均賃金が307.4千円であることを踏まえると、平均よりは高めの賃金水準であることがわかります。

やはり、専門分野の知識が必要となるため、平均賃金は高めです。さらに、会社から独立して経営コンサルの仕事を獲得できれば、高い賃金も狙えるでしょう。

ただし、高い賃金を得られる代わりに、さまざまな業務をこなさなければいけないのが経営コンサルタントです。実力主義の傾向が高い経営コンサルタントの世界では、求められた成果をクライアントに与える必要があります。そのため、賃金が良いからといって経営コンサルタントを目指すと、現実と理想にギャップが生じ、長続きしない可能性が高いです。

特に中小企業ともなると想定していない事態に陥る可能性も考えられるので、予想外の業務に追われることも。あくまでも仕事へのやりがいやモチベーションをベースに経営コンサルタントを目指しましょう。

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中小企業の経営コンサルタントに必要な資格は?

中小企業の経営コンサルタントになるためには必要な資格はないものの、スキルの証明のために取得しておいた方が良い資格があります。そこで、中小企業の経営コンサルタントを目指すうえでおすすめの資格を5つ集めました。

どれもある程度の勉強量は必要ですが、中小企業の経営コンサルタントになるために役立つ資格ばかりです。これから経営コンサルタントを目指す人やスキルアップを狙う人は参考にしてください。

​​中小企業診断士

中小企業診断士は中小企業の経営課題に対して診断とアドバイスを送る専門家で、国家資格です。中小企業に関わる経営戦略やマーケティング、財務会計など幅広い知識が求められます。中小企業の経営コンサルタントとして活躍していくためには、まず取得しておきたい資格の1つです。

中小企業診断士になるためには、特に実務経験や資格は必要ありません。まず7科目の一次試験に合格した後に、一次試験の内容を踏まえた二次試験に合格します。さらに、15日以上の実務従事か実務補習を受けなければいけません。

一次試験の内容は以下の通りです。

  • 経済学・経済政策
  • 財務・会計
  • 企業経営理論
  • 運営管理
  • 経営法務
  • 経営情報システム
  • 中小企業経営・中小企業政策

以上のように中小企業に関する幅広い知識を勉強する必要があります。幅広い知識が求められるため合格率はそれほど高くはなく、中小企業診断協会が発表している「令和3年度中小企業診断士第1次試験の結果について」を参照すると、一次試験の合格率は36.4%です。

二次試験に関してはさらに合格率が低く、たったの18.3%しかありません。狭き門ではありますが、それだけ中小企業に関する知識を有していることの証明になります。

また、受験している人のうち民間企業に勤めている人の割合は60%以上を超えているのも特徴的です。経営コンサルタントとしてのスキルアップに利用している人が多いのでしょう。

勉強時間の目安は1,000時間ともいわれているため、1日2時間勉強しても1年半ほどかかりますが、それだけの価値はある資格といえるでしょう。

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公認会計士

公認会計士といえば会計監査の専門家とイメージする人も多いでしょう。大企業であろうとも中小企業であろうとも必ず「会計」は存在しているので、経営コンサルタントとして活躍していくには公認会計士の資格が役に経たないことはありません。

公認会計士も金融庁の公認会計士・監査審査会が実施する国家試験で、受験資格は特に設定されていないのが特徴的です。受験の間口は広いものの専門的な知識が必要であるため、令和3年度の試験ではたったの9.6%しか合格していません

「参考:令和3年公認会計士試験の合格発表の概要について

また、合格者のうち学生や専門学校の割合が67.9%を記録していて、会社員で合格している人の割合はわずか8.2%です。全体的にまとまった勉強時間が必要なため、会社に勤めながら合格するにはコツコツ勉強する必要があります。

しかし、試験内容が会社法や監査論、財務会計論など会計に関する知識ばかりであるため、経営コンサルタントとして会計面からアプローチするのに役立ちます。経営コンサルタントとして活躍していくためには、取得しておいて損しない資格の1つです。

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経営士

経営士は「一般社団法人 日本経営士会」が管理している民間資格です。民間資格とはいえその歴史は古く、昭和28年に一般公募が開始され、日本における最も古い経営コンサルタント資格として知られています。歴史ある資格として知られているので、経営コンサルタントとして活躍していくためには取得しておいて損はありません。

経営士の資格を取得するためには日本経営士会に入会することが前提となっていて、主に以下3種類の会員に分かれています。

  • 資格会員
  • 一般会員
  • 研究会会員

さらに上記のなかでも資格会員は経営士と経営士補に分かれていて、複雑な区分になっています。研究会員であれば学生でも入会できますが、一般会員と資格会員になるためには経営管理の実務経験が5年必要です。

経営コンサルタントになるための資格というよりは、経営コンサルタントとしてキャリアアップさせるために役立つ資格といえるでしょう。

MBA

MBAとは「Master of Business Administration」の略称で、日本では「経営学修士」などと呼ばれています。経営学の大学院修士課程を修了するともらえる称号で、経営に関する知識を網羅していることを証明できます。

MBAでは経営に関する知識はもちろんのこと、英語力も求められます。そのため、MBAの称号を取得できれば、グローバルな活躍も夢ではありません。

また、MBAといえば海外で取得するイメージがありますが、近年では国内の大学院でも取得可能で、早稲田大学大学院や一橋大学大学院などで学ぶことも可能です。ただし、受験倍率はそれなりに高く、2倍を超えるともいわれています。つまり、合格率は50%を切るということです。

取得できればスキルの証明になりますが、狭き門であることは理解しておきましょう。

社会保険労務士

社会保険労務とはいわゆる「社労士」と呼ばれる資格で、社会保険労務士法に基づいた国家資格です。企業を運営していくためには会計や経営戦略などが必要になりますが、なかでも社労士は「人材」の知識に焦点を絞っています。

社会保険の手続きのサポートや年金相談業務など、いずれも企業と人材との関係を良好に保つための知恵が網羅されています。企業と人の仲立ちを果たす社労士は専門的な知識が豊富に求められ、資格の取得難易度も高めに設定されているのが特徴的です。

厚生労働省が発表している「第52回社会保険労務士試験の合格者発表」によると、3万4,845人が社労士になるための試験を受験して合格者数は2,237人。合格率で表すとわずか6.4%しかありません。

合格率10%以下の受かりにくい資格ではありますが、経営コンサルタントとして「人材」に焦点をあてながらアドバイスするためには必須の資格でもあります。人事や企業経営に焦点をあてながら経営コンサルしていくには取得しておいた方がよいでしょう。

中小企業の経営コンサルタントになるために必要なスキル

中小企業の経営コンサルタントとして活躍するためには、3つのスキルが重要です。資格の取得も大切ですが、以下のスキルを磨くことも忘れないでください。

コミュニケーション能力

経営コンサルタントはまず経営課題を発見することから始まる仕事です。そのため、企業の担当者から悩みや課題を聞き出す能力が求められます。

さらに、悩みや課題を聞く相手は経営者に限らず、管理職や現場の人間など多岐にわたるため、あらゆる層を想定したコミュニケーション能力が必要です。

業界知識や業務経験

経営コンサルタントとして活躍していくためには、コンサル相手の業界知識や経験は必須です。業界の知識や経験があるほど深い知識を有しているので、効果的な戦略を立案しやすくなります

経営コンサルタントと名乗るのであれば、最低でも5年程度の業務経験は必要でしょう。さらに、業界知識だけでなく社会情勢も加味する必要があるため、業界を横断した知識が必要です。

プレゼンスキル

経営難を解消する適切な課題を発見したとしても、クライアントが望まなければコンサルできないのが経営コンサルタントの現実です。そのため、自分の提案が通るようなプレゼンテーションを披露する必要があります。伝える能力がなければ、どれだけ優れた考えでも意味がありません。考えを言葉に具現化することで初めて意味を持ちます。

良いプレゼンをするためには以下のポイントに注意してください。

  • 徹底的に論理的な思考を遂行する
  • 相手に理解してもらう説明をする
  • 行動を促す構成にする

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以上のポイントはいきなり向上するものではありません。場数を踏むことで徐々にコツを掴んでいくものなので、日常の会話などから実践していきましょう。

中小企業の経営コンサルタントになるためには?

中小企業の経営コンサルタントになるためには、特定の資格は必要ありません。しかし、クライアントから信頼を勝ち取るためには、余程の実務経験か業界知識を有していなければいけません

どちらもそれほど自信がない人はこの記事で紹介した資格を取得し、経営コンサルタントとしての信用をクライアントから獲得することから始めてみるとよいでしょう。