IT業界で働くエンジニアの中には、フリーランスになろうと考えている人もいるのではないでしょうか。また、フリーランスという働き方を考える中で、今後の需要を考えてITエンジニアを志す人もいるでしょう。

今回はITエンジニアの需要を紹介するとともに、フリーランスのITエンジニアになるために必要なことやメリット・デメリットを解説しています。ITエンジニアでフリーランスになろうと考えている人は参考にしてください。

ITエンジニアは不足している

経済産業省の委託で行なわれた「IT人材需給に関する調査」によると、IT人材は現在不足しており、今後さらに需要と供給のギャップが広がると予想されています。

出典:IT人材需給に関する調査

この調査結果の試算では、需要の伸び率を低・中・高の3パターンで考えていますが、低位の場合でも約16万人の人材が不足するとされています。企業のDX推進によるサーバーの仮想化や、ERP(統合基幹業務システム)の導入・リプレースなどでIT人材への需要が高まっているのに対し、対応できる人材の供給が追いついていないため、このような試算結果になったと考えられます。

参考:IT人材需給に関する調査(2019年3月)みずほ情報総研株式会社|経済産業省

IT業界における35歳定年説は昔の話

かつてはエンジニアやプログラマなど、IT業界の人材は35歳が定年であるという説が、まことしやかにささやかれていました。その理由は大きく次の2点です。

  • IT業界のブラックな就労環境により無理が利かなくなる
  • 年を取ると新しいことを覚えづらくなり、技術の入れ替わりについていけない

以上の理由からITエンジニアが最前線で活躍できるのは35歳前後までで、それ以降は人材教育やプロジェクト管理側の仕事に回らざるを得ないと考えられてきました。

会社勤めならば、40代・50代になっても雇用され続けるので収入がなくなる心配はないでしょう。しかし、フリーランスのITエンジニアは35歳を過ぎると仕事が取りにくくなり、それまでに人生設計に必要な資金を稼ぎきらなければならないといった、厳しい定説です。

ただし、近年IT業界の就労環境も見直しが進んでおり、40代以降のエンジニアも現場で活躍しています。フリーランスも同様に、年齢を重ねても新しいことに対して前向きに挑戦できる人ならば、年齢に関係なく働き続けられるでしょう。

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フリーランスITエンジニアの需要も高まる

ITエンジニアが不足している背景から、フリーランスに仕事を依頼するケースも増えています。フリーランスのITエンジニア向けエージェントサービスも登場しており、実力があれば企業とフリーランスのマッチングも難しくない状況です。

スキルと実績のあるITエンジニアなら、フリーランスになっても活躍の場が見込まれるでしょう。

フリーランスITエンジニアの働き方

フリーランスITエンジニアの働き方には、常駐型とリモート・在宅型の2種類が存在します。

常駐型

常駐型は、クライアント企業や指定された現場に出向く働き方です。会社員のITエンジニアでも、案件によっては自社ではなく、クライアント企業に出向するケースもあるでしょう。

遠隔では対応が難しい、機器の設置や環境構築を含んだ案件では、こうした働き方になります。

常駐型で働く場合は、指定された業務を行なう対価として報酬を得る、準委任契約となるケースが多くなります。週5日出勤というような、会社員とあまり変わらない働き方になり、フリーランスらしさは薄いかもしれません。

リモート・在宅型

リモート・在宅型は、自宅や自分のオフィスなど任意の場所で業務を行ない、クライアント企業に行く必要がない働き方です。

ビデオ通話やチャットツールも普及しており、打ち合わせもオンラインで完結するようになっているので、近年増えてきている働き方です。

この場合、成果物の提出・完成をもって報酬受け取りとなる請負契約を結ぶケースが多くなりますが、業務内容によっては準委任契約となるものもあります。

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フリーランスITエンジニアになるために必要なこと

フリーランスITエンジニアになるには、どの職種を仕事の軸にするのかを考え、実務経験を積む必要があります。また、自己研鑽や仕事の取り方・進め方について、あらかじめ理解しておきましょう。

どの職種でフリーランスになるかを考える

ITエンジニアといっても、その職種はさまざま。同じエンジニアと付いていても、システムエンジニア、Webエンジニア、インフラエンジニア、サーバーサイドエンジニアなど、担当する領域は異なります。

最近はIoTやAI技術を使った業務改善ツールの開発やサービスの提供なども注目されて、その分野に強いエンジニアも今後需要が高くなると予想されます。

フリーランスのITエンジニアになるなら、自分の習得スキルや経験を見直すとともに、今後どの分野のエンジニアが必要とされるか、自分はどんなエンジニアになって何がしたいのかをしっかり考えましょう。

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最低でも1年以上、できれば3年程度の実務経験を積む

未経験でいきなりフリーランスのITエンジニアになるのは、ほぼ不可能です。

フリーランスのITエンジニアに仕事を依頼するクライアントは、即戦力を求めています。要求に対して的確な提案ができ、期待通りの結果を出せなければなりません。

まずはなりたいITエンジニアの方向性を決め、実務経験を積みましょう。経験年数は最低でも1年、できれば3年以上経験してプロジェクトを主導できるまでの実力を身につけたいところです。現在の職場では、希望する経験が積めないようなら、転職も検討しましょう。

最近は社会人向けプログラミングスクールなどで、カリキュラム修了後に転職サポートしているところもあります。カリキュラムの中で副業としてエンジニア案件を受ける機会があったり、課題として作成する成果物がポートフォリオに活かせたりします。こうしたスクールも、フリーランスになる足がかりとして活用しましょう。

自習やスクール通い、資格取得などスキルを磨く

フリーランスになると、会社員時代よりも実力が重視されるので、積極的なスキルアップも大切です。会社が研修機会を与えてくれたり、業界の動向を教えてくれたりといったことがなくなるので、自分で意識して動かないと学習機会を得られません。

実務経験にプラスして、IT分野の自習やスクール通学を検討しましょう。学習の目標として、関連資格を取得しておけば、フリーランスになってからのアピール材料にもなります。

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フリーランスでの仕事の取り方・進め方を知る

仕事の取り方や進め方についても、あらかじめ理解しておくと、フリーランスになってからの仕事がスムーズです。

仕事の取り方には次のものがあります。

  • 知人からの紹介
  • 個別の営業活動
  • クラウドソーシング
  • エージェント

プライベートや仕事関係の繋がりから受注を見込めるなら、独立直後も受注に困らないでしょう。ただ、誰もがこうした人脈を事前に築けているとは限りません。

個別の営業活動から受注してもらうのは、実績がないうちは難しいこともあります。必要としている相手を見極め、自分が提供できる価値を示せるよう、ポートフォリオを整えておく必要があります。

クラウドソーシングやエージェントなどで、仕事とマッチングする場合も、スキルと実績の提示が重要です。選ばれるITエンジニアとなるよう、自分のキャリアを棚卸ししておきましょう。

可能ならば独立前に副業として案件受注し、仕事を取る段階からクライアントとの打ち合わせ、納品、請求、入金まで一連の流れを経験しておくと、フリーランスになってからの働き方をイメージしやすくなります。

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フリーランスITエンジニアのメリット・デメリット

フリーランスのITエンジニアになるメリットには、自分で仕事を選べ、働く場所や時間を自由にできる点が挙げられます。また、自分の頑張りが収入に反映されてやりがいが大きいのも、フリーランスの魅力です。

反面、収入の不安定さや何かあった時にフォローしてもらえないなどのデメリットがあり、社会的信用が低くなりやすい点も理解しておきましょう。

メリット:受ける案件を自分で決められる

フリーランスのITエンジニアになれば、自身で営業活動し、どの仕事を受けるかも決められます。不本意な案件を受ける必要もなく、新しい領域での受注を始めたいときも柔軟な対応が可能です。仕事量を調整して、プライベートとの両立もしやすくなるでしょう。

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メリット:働く場所や時間も自由にできる

リモートワークが普及しつつあるものの、会社勤めであると出社しなければならない時もあるでしょう。多くの場合、勤務時間も指定され、働き方がある程度制限されてしまいます。

在宅・リモート型の案件をメインに受注できれば、自分の好きな場所で、好きな時間に働くことも可能です。自分のライフスタイルに合わせた働き方がしやすくなる反面、自己管理能力が問われますが、家庭の事情と両立させたり、複数の仕事を掛け持ちしたりもできるでしょう。

メリット:成果が収入に直結してやりがいがある

フリーランスは個人の頑張りが報酬に反映されやすく、短期間に大きく収入を伸ばすこともできます。

会社勤めのITエンジニアでは、昇給・昇進の機会は限られ、仕事の成果は社内で分け合います。高いスキルを持っている人ほど、仕事への貢献度に対して報酬が少ないように感じる場面もあるでしょう。

フリーランスは個人の責任が重くなる一方で、成果によって得られる報酬が全て自分の取り分となります。評価が収入に反映されて、やりがいを感じやすい点もメリットです。

デメリット:収入が不安定になる恐れがある

会社に勤めていれば、ひと月の受注量にかかわらず、一定額の給与が保証されます。しかし、フリーランスは受注が途切れれば、収入減に直結します。体調を崩して仕事ができない期間があると、収入が途絶える恐れもあるでしょう。

仕事が途切れないフリーランスになる努力をするとともに、万が一のケガや病気に備えた保険への加入も検討して備えておきたいところです。

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デメリット:会社からのフォローがない

フリーランスは仕事で行き詰まったとき、相談できる同僚や上司が身近にいません。IT業界の最新情報交換や新しい技術を学ぶ機会も、自分で意識しなければ得られないでしょう。営業活動や経理、事務処理なども全て自分でしなければなりません。

こうした、会社に所属していれば当たり前に受けられるフォローがなく、孤独になりやすい点はフリーランスのデメリットといえます。

こうしたフォローやサポートのなさは、自分自身で補う工夫が必要です。同業者との交流会やセミナー、勉強会などに参加し、人脈を開拓して知識を増やしましょう。

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デメリット:社会的信用面で不利なことがある

フリーランスになると、ローンやクレジットカード、不動産入居時の審査が下りづらくなることもあります。収入の不安定さもあり、社会的信用面で不安感を持たれやすいのが原因です。

こうした事態が予測されるなら、フリーランスとして独立する前に、審査や契約を済ませておきましょう。

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クライアントから選ばれるフリーランスITエンジニアになろう

IT業界のエンジニアは不足しており、今後も需要と供給のギャップが発生すると予想されています。こうした背景から、フリーランスのITエンジニアも活躍の場が期待できるでしょう。

ただし、クライアントから選ばれるITエンジニアになるには、十分なスキルと経験が不可欠です。フリーランスITエンジニアのメリット・デメリットも理解し、必要とされる存在を目指しましょう。