財務コンサルの業務は、資金調達から戦略まで多岐にわたります。企業の運営に関わる重要な業務を担う専門家であるため、年収が高く、やりがいを感じられる魅力的な職業です。
しかし、財務コンサルになるためにどのようなスキルや資格があれば良いのかわからない人もいるでしょう。そこで今回は、財務コンサルの基礎知識として、主な仕事内容からスキルや資格について解説します。基礎知識を理解した上で、財務コンサルを目指していきましょう。
財務コンサルの主な仕事内容
財務コンサルは、企業の財務情報を元に、売上に関する課題を抽出したり売上増加のための仕組みを作ったりする仕事です。
具体的な仕事内容として、以下のような業務が挙げられます。
- 業務プロセスの改善
- 資金調達
- 投資戦略立案
- M&A戦略
- 市場調査
アドバイスだけでなく、チームアップから分析、中間報告や最終報告など、PDCAを回しながら実務に当たるケースも。そのため、財務コンサルは財務に関する課題について、クライアント企業よりも深く理解しておく必要があります。
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財務コンサルに必要な資格
財務コンサルになるには、財務に関する知識が求められます。そのため、場合によっては専門資格やこれまで財務会計に携わってきた経験、または相応のスキルが求められるでしょう。
以下では、財務コンサルになるために必要な資格やスキルについて解説します。財務コンサルを目指すのであれば、資格やスキルの取得を検討してみましょう。
財務コンサルに必要な資格はない
財務に関連する知識を幅広く理解していなければいけない財務コンサルですが、必須の資格はありません。資格を保有していない場合でも、財務コンサルと名乗ることはできます。
しかし、当然資格を保有しているのと保有していないのでは、企業は後者を選ぶでしょう。
そのため、以下のような資格を保有していると、有利になります。
- 公認会計士
- 税理士
- 中小企業診断士
財務コンサルを目指すのであれば、知識を得るだけではなく、いずれかの資格取得を検討しておきましょう。
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公認会計士とは
公認会計士は、財務コンサルに有利な資格です。三大国家資格の一つになるため、財務・会計におけるトップクラスの専門性と言えるでしょう。
ただし、公認会計士の資格を取得するには、年単位での学習が必要です。財務コンサルだけのためだけに取得するというよりは、今後のキャリアも考えた上で取得しておくと良いでしょう。
税理士
税理士の資格は、財務コンサルに有利な資格です。各種税金の計算や申告に関する知識、企業における財務処理や会計帳簿作成についての知識を得られます。ただし、税理士の資格取得は困難です。
受験資格は、以下のように定められています。
- 大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
- 大学3年次以上で、社会科学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得した者
- 一定の専修学校の専門課程を修了した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
- 司法試験合格者
- 公認会計士試験の短答式試験に合格した者
(引用元:国税庁)
税理士として独立する人も多いですが、財務コンサルの方が深く企業に関われます。税理士の資格を取得しておくと企業からの信頼が厚くなるため、税理士の資格を持つ財務コンサルとして活躍することができるでしょう。
中小企業診断士
中小企業診断士は、中小企業が抱える課題を見つけ、アドバイスを行うための資格です。中小企業診断士の受験資格はなく、誰でも受験可能。
しかし、2次試験合格後3年以内に実務または実務補習を15日以上行わなければいけません。また、難関資格と言われており、合格率は約20%です。
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財務コンサルに求められるスキル
財務コンサルに求められるスキルとして、財務や会計に関する知識が必須です。しかし、財務コンサルは、企業の課題を理解し、提案しなければいけないため、以下のスキルも必要になります。
- ヒアリング能力
- 論理的思考力
- プレゼンテーション能力(提案力)
- 交渉力
- リーダーシップ
- マネジメント力
財務コンサルは、短期間で企業の財務に関する課題を解決に導かなければいけません。そのために、企業を引っ張っていくような能力が求められます。
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未経験からでも財務コンサルは目指せる?
財務コンサルは、未経験からでも目指せる職種です。ただし、未経験の場合は過去の経験が評価される傾向があります。
たとえば、金融業界や企業の財務や会計、会計関連のシステムエンジニアなどであれば、未経験でも財務コンサルを目指せるでしょう。まったくの未経験から財務コンサルを目指すのであれば、一度関連する業種に就職し、必要な経験や知識、スキルを学んだ方が良いです。
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財務コンサルに向いている人の特徴
財務コンサルに向いている人は、数字面の細かさはもちろんですが、コミュニケーション能力がある人です。
財務に限らず、コンサルタントの仕事はコミュニケーション能力が求められます。クライアントやチームメンバーとのコミュニケーションが図れなければ、目的に向かってチームを引っ張っていけません。
また、プロジェクト単位でアサインされるケースが多いため、顧客に合わせた柔軟な対応も必要です。
- 数字への細かさ
- コミュニケーション能力
- 柔軟に対応できる自己管理
上記3つの特徴がある人は、財務コンサルに向いていると言えるでしょう。
財務コンサルの平均年収は800万円前後
財務コンサルタントの平均年収は800万円前後と言われています。ただし、役職やコンサル経験によって大きく異なるので、以下の表に目安の年収をまとめました。
役職 | コンサル経験 | 年収目安 |
アナリスト | 0~2年 | 500~600万円 |
アソシエイト | 0~3年 | 600~700万円 |
シニアアソシエイト | 2~6年 | 700~900万円 |
マネージャー | 3~10年 | 900~1,400万円 |
ディレクター | 5~15年 | 1,300~1,800万円 |
パートナー | 7年以上 | 2,000万円以上 |
20代後半で、シニアアソシエイトになれば、年収800万円の収入を得られるでしょう。30代以降になってくれば、財務コンサルとして、年収1,000万円以上の収入を目指せます。
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財務コンサルのキャリアパス
財務コンサルのキャリアパスは、多岐にわたります。財務に関する業務であるため、他のコンサルと比べてもキャリアパスは多いです。
代表的なキャリアパスとしては、以下のものが挙げられます。
- コンサルティングファームで上の役職(マネージャーやパートナー)
- コンサルティングファームの移籍
- コンサルタントとして独立
- 投資銀行やファンドなどの金融機関
- 財務部門やM&A部門のある会社へ転職
- CFO
財務コンサルとして経営問題を解決してきた経験があれば、幅広いキャリアを目指せます。財務コンサルのネクストキャリアを考えるのであれば、早い段階から財務コンサルで経験を積んでおきましょう。
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財務コンサルの主要企業
財務コンサルの主要企業をいくつか紹介します。財務コンサルといっても、どのような企業があるのか実際に知らない人も多いのではないでしょうか。
以下で紹介するのは、主要な財務コンサルティングファームや財務に強いとして知られるコンサルタント会社です。
会社名 | 特徴 | 会社住所 |
PwCアドバイザリー合同会社 | M&A・事業再生・インフラ関連に強い | 東京都千代田区大手町1-1-1大手町パークビルディング |
TRADコンサルティング株式会社 | 公認会計士・税理士・司法書士・社会保険労務士によるワンストップ支援 | 東京都千代田区九段南1-5-6りそな九段ビル7F |
株式会社KPMG FAS | 世界4大会計事務所KPMGグループのメンバーファーム | 東京都千代田区大手町1-9-5大手町フィナンシャルシティ ノースタワー |
コラボレックス株式会社 | 新規銀行との取引開始実績100% | 大阪府大阪市中央区石1-1-1 天満橋千代田ビル2号館8F |
クロール(旧ダフ・アンド・フェルプス)株式会社 | 1932年創業の独立系ファイナンシャル・アドバイザリー会社 | 東京都千代田区内幸町2-2-2 富国生命ビル22F |
上記のように、財務コンサルを行っている会社と一重に言っても、企業によって特徴は異なります。財務コンサルの企業を探す際は、自身のこれまでの経験を活かせる企業を選ぶと、転職に有利になるでしょう。
財務コンサルとしての5つの転職先
財務コンサルとしての転職先は、主に5つあります。
- 税理士法人
- コンサルティングファーム
- 監査法人
- 金融機関
- 一般事業会社
以下では、転職先それぞれの特徴や、活かせる経験などを解説するので、参考にしてください。
税理士法人
税理士法人とは、主に企業などの税理士業務を組織的に行う法人です。
税理士法人の業務範囲は、以下のとおり。
- 財務書類の作成
- 会計帳簿の記帳代行
- その他財務に関する事務
会計業務の経験を活かし、税理士の独占業務である税務を経験できます。企業の財務よりも専門的なコンサルティングを行うのであれば、税理士法人はおすすめの転職先と言えるでしょう。
コンサルティングファーム
コンサルティングファームは、企業の抱える課題に対してアドバイスなどを行います。大手・中小問わず、様々な業界でのコンサルティングを行うため、柔軟性が求められる業種です。
コンサルティングファームに転職する場合、金融機関での法人営業経験や財務、会計、経理の実務経験が求められます。幅広い業種に携われる点から、今よりも知識を高めたい人におすすめです。
監査法人
監査法人とは、公認会計士法に基づき、会計監査を目的としている法人です。設立には5人以上の公認会計士が必要となるため、専門性の高い業種と言えるでしょう。
最低5名の公認会計士で設立ができ、大きいところでは3,000人以上の公認会計士等が所属するビッグファームもある。 引用元:日本公認会計士協会 |
監査法人に転職するには、金融機関の実務経験や、アドバイザリー業務経験が求められます。会計や内部統制に関する専門性の高い知識を得られるため、レベルの高いコンサルティングを行いたい人におすすめの転職先です。
金融機関
財務コンサルティングの転職先として、投資やファンドなどの金融機関もあります。金融機関では、財務とはまた違った観点からアドバイスできるのが魅力です。資産運用や金融商品などの専門知識を得られるため、企業の財務コンサルティングとはまた異なる仕事となります。
財務コンサルティングでの経験を活かしながら、幅広い客層にアドバイスできるようになれる業種です。
一般事業会社
財務コンサルティングでの経験は、事業会社への転職にも役立ちます。経営陣と連携して、会社経営や組織戦略などに携われるため、より企業の内側に入った戦略知識を得られるでしょう。
また、コンサルティングファームと事業会社は、よく混同されやすいです。それぞれの大きな違いは以下のとおり。
- コンサルティングファーム……スキルの重き置かれるのが個人・主に課題解決を図る業務
- 事業会社…スキルの重きを置かれるのが会社・主に新しい戦略やサービスについて提案する業務
後々事業会社への転職を考えてコンサルティングファームで経験を積む人も多いので、将来のキャリアを考えながら、就職先を考えると良いでしょう。
財務・会計・金融の違い
財務コンサルの他にも、企業のお金に関するコンサルティングはいくつもあります。とくに知られているのは「会計コンサルタント」「金融コンサルタント」の2つではないでしょうか。いずれもお金に関するコンサルタントなので、混同してしまっている人もいるかもしれません。
以下では「会計コンサルタント」と「金融コンサルタント」の特徴について解説します。
会計コンサルタントとは
会計とは、基本的にお金と品物のやり取りなど、お金の出入りについて記録する業務です。企業の資金全体の流れを把握するのが、会計業務になります。
会計コンサルタントは、このような会計業務のフローの見直しや最適化などを提案する業務です。財務コンサルタントは資金調達や投資など、どちらかと言えば「企業の資金を増やすため」の業務ですが、会計コンサルタントは「企業の支出を抑えるため」の業務と言えます。
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金融コンサルタントとは
金融コンサルタントは、企業の資金戦略の検討から立案、改善などが主な業務です。企業の資金調達を円滑にすることを目的としています。
業務内容としては、財務コンサルタントとほぼ同じです。ただし、財務コンサルティングは、予算や資金の管理も含まれるため、業務の幅の違いがあると言えます。
財務コンサルは知識と経験が必要
財務コンサルを目指すには、資金調達や資金戦略などに関する知識や経験が欠かせません。未経験からでも財務コンサルは目指せますが、あらかじめ知識やスキルをつけたり、資格の取得も検討しておくと良いでしょう。経験を積んだり知識を得たりするためには、財務系コンサルティングファームへの就職も検討してみてください。
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